研究課題/領域番号 |
17K10869
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
松尾 孝之 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (00274655)
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研究分担者 |
梅野 哲也 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 研究協力員 (00737273)
吉田 光一 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (20393457)
氏福 健太 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (20437867)
馬場 史郎 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (30530430)
鎌田 健作 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (30549655)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 悪性神経膠腫 / 浸潤能 / 脳血液関門モデル |
研究実績の概要 |
脳腫瘍の中で悪性神経膠腫は頻度の高い腫瘍であるが、その高い増殖能・血管新生能・浸潤能のために標準治療である最大限の摘出後に放射線治療と化学療法による集学的治療を行っても生命予後は14か月前後であり満足のいくものではありません。そこで新規の治療の探索が必要であると考えます。悪性神経膠腫の治療を困難にしている原因の一つは高い浸潤能にありますが、これをターゲットとした治療は現在ありません。その理由の一つとして現在用いられているin vivoの動物脳腫瘍モデルのほとんどは脳腫瘍細胞株の脳内への移植により作成され、比較的境界の明瞭な腫瘍が作成されており、実際の悪性神経膠腫を反映していないと考えられます。本研究では、「悪性神経膠腫浸潤開始因子の脳血液関門モデルを用いた探求」として、悪性神経膠腫が持つ微小環境に注目して浸潤能のメカニズム解明を行います。すなわち、悪性神経膠腫細胞が血管腔へ突起を出し栄養の受け渡しをしている状態で存在しているところに、虚血などの様々なファクターが契機となって血管腔を離れ浸潤を開始する点に着目しています。これを表現できるのが長崎大学薬理学教室で作成された脳血液関門モデルであります。今まで浸潤そのものが見ることができず、また、浸潤のメカニズムが解析されていない状態であるのに、浸潤の観察が行えるようになり、また、虚血誘導などによって浸潤が促進された腫瘍細胞および腫瘍微小環境で発現するタンパクを探索することを最初の目的としております。また、このタンパクを抑制することによって浸潤の制御を行うことを次の目的としております。浸潤の抑制が新規の悪性神経膠腫の治療へのトランスレーショナルリサーチとなることを目指します。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度は長崎大学薬理学教室で作られた脳血液関門モデル上で悪性神経膠腫細胞株を培養し、酸素濃度5%の低酸素下での培養で血管との接着を失い浸潤を開始することを観察し、この時に起こるタンパク発現の変化をプロテオミクス解析を行って浸潤開始に関与するタンパクの候補を検討しています。浸潤開始のkeyとなるタンパクの絞り込みを行い、その機能のconfermationを計画しております。候補を2つに絞り込み、siRNAの手法により抑制をかけることで浸潤の抑制が行えるか実験を計画しています。
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今後の研究の推進方策 |
次年度には、siRNAで浸潤開始を抑制した脳腫瘍細胞株 と siRNAを行っていない細胞株それぞれをnude mouseに移植してできる脳腫瘍の病理の観察を行います。また、治療実験を行い、survivalの変化を調べます。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画がやや遅れており、in vitroでの実験を次年度に行うこととしたために次年度使用が生じています。in vitro での実験に関しては、試薬などの購入が必要となります。また、今後は治療実験に移行していくためにnude mouseなどのin vivo実験に必要な動物の購入費やsiRNAのための試薬が必要になってきます。
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