研究課題
グリオーマ細胞株(U87⊿EGFR)が虚血下で血管内皮細胞および血管周皮細胞との接着を離し浸潤を開始するときに発現するタンパクを同定するために、通常培養および低酸素培養下それぞれでマトリジェル上と脳血液関門モデル上の細胞株のプロテオミクス解析を行った。2DGE上に抽出したタンパクで、培地条件で差があり、かつ脳血液関門の培養条件で差が得られた49種にqPCRで定量化を行なった。Wilcoxon検定を行い2.5timesをcut off値として候補タンパクを絞り込み、最終的にANOVA with Bonferronis post-testの結果をもとにpaxillinに対して研究を進めることとした。paxillinの機能のconfirmation目的でsiRNAの手法を用いてU87⊿EGFR-si-paxillinを作成し、cell viability assayとscratch assayを行い機能が失われていないことを確認した。次にU87⊿EGFR-si-paxillin-GFPを作成してmouse脳内に移植。腫瘍形成後にMCA一時閉塞による虚血群とsham operation群それぞれの組織をslice cultureとしてU87⊿EGFR-si-paxillin-GFP の運動をtimelapseで観察した。U87⊿EGFR-si-paxillin-GFP の運動低下はU87⊿EGFR-GFPと比較して明らかであったが、虚血群とsham op群でのU87⊿EGFR-si-paxillin-GFPの運動の差を統計学的に証明することはできなかった。U87⊿EGFR-si-paxillin-GFPを移植したnude mouseの病理組織像の観察を行ったが、虚血群とsham op群では腫瘍辺縁の性状や腫瘍塊の外にある細胞数、核分裂数、Mib1-LIなどに差を認めなかった。このためにsurvival実験は行っていない。paxillinはactinの形成にかかわり細胞浸潤に重要なタンパクであると考えられ、今後遠隔再発を認める臨床症例での発現を観察するなど研究を続けていく。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Cell Mol Neurobio
巻: 42(4) ページ: 997-1004
10.1007/s10571-020-00988-y