研究課題/領域番号 |
17K10870
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
牧野 敬史 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (90381011)
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研究分担者 |
中村 英夫 久留米大学, 医学部, 講師 (30359963)
大塚 雅巳 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 教授 (40126008)
秀 拓一郎 北里大学, 医学部, 准教授 (40421820)
篠島 直樹 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (50648269)
黒田 順一郎 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (90536731)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脳原発悪性リンパ腫 / 治療標的分子 / 上皮間葉転換因子 / 浸潤 / 新規治療開発 |
研究実績の概要 |
上皮間葉転換(EMT: Epithelial-mesenchymal transition)が、がん細胞の転移や浸潤および増殖などを促進することがわかってきたので、近年、様々な腫瘍において、EMT関連分子の発現や役割の解析が進められている。我々は、脳原発悪性リンパ腫(PCNSL)組織において、EMT関連転写因子であるZEB1とSlugの発現を解析し、治療成績、腫瘍の多発性、EMT制御因子およびリンパ腫細胞起源との関連を検討した。当科にて生検術を施行し、B細胞性リンパ腫と診断後、大量メソトレキセート療法および放射線照射にて治療したPCNSL76例を対象とした。抗ZEB1および抗Slug抗体にて免疫染色を行い、組織内の20%以上の細胞に発現を示す場合を陽性と評価し、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を比較した。また腫瘍の多発性、リンパ腫細胞起源(germinal center、non-germinal center)、BCL2およびBCL6との発現の関連も比較した。免疫染色の結果、ZEB1の発現は55例(72.4%)が陽性であり、Slugの発現は56例(73.7%)が核内に、20例(26.3%)が細胞質に陽性であった。治療成績の解析では、ZEB1の発現はOS、PFSともに差はなかったが、Slugに関しては細胞質陽性群が、OS (p=0.0265)、PFS(p=0.0034)共に有意に延長していた。また多発例では、ZEB1陽性(p=0.0459)およびSlug核内陽性(p=0.0197)の割合が高かった。さらにBCL2、BCL6の発現およびリンパ腫細胞起源における両者の発現を比較したが、有意差は認めなかった。脳原発悪性リンパ腫組織においても、EMT関連分子は高発現がみられ、腫瘍の多発性と関連があり、Slugの核内発現は予後不良と関連していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度脳原発悪性リンパ腫患者サンプルにおいて、上皮間葉転換誘導因子が高発現していること、発現が腫瘍の多発性および予後に相関していることが確認できた。培養細胞を使用したin vitroの実験までは進めず、分子メカニズムの解明までは進めなかった。分子メカニズム解明に必要な組織からのDNAおよびRNAの抽出が遅れたことは原因であった。
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今後の研究の推進方策 |
共同研究者による他の癌腫培養細胞株を使用したin vitroの実験で、上皮間葉転換誘導遺伝子阻害剤が増殖を抑制することが確認された。この薬剤を用いて、リンパ腫培養細胞株への応用を進める。また動物モデルを作成し、in vivoでの効果も検討する。 臨床組織サンプルが新たに採取できたので、次年度の助成金と併せて解析用の試薬などの購入を増やし、分子メカニズムの解明につながる遺伝子発現解析を継続して進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、実験計画の遅延のため動物実験などを遂行することが出来なかった。 次年度は、組織サンプルからの網羅的な遺伝子解析および実験動物を使用し腫瘍移植モデルを作成し, in vivoでの解析実験まで行う計画である。
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