研究課題/領域番号 |
17K10876
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
廣瀬 雄一 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (60218849)
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研究分担者 |
安達 一英 藤田保健衛生大学, 医学部, 准教授 (10338056)
佐々木 光 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (70245512)
大場 茂生 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (80338061)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 神経膠腫 / テモゾロミド / 耐性 / G2チェックポイント / DNAミスマッチ修復 |
研究実績の概要 |
我々はこれまでに化学療法剤temozolomide (TMZ)の悪性グリオーマ細胞に対する作用がG2期DNAチェックポイントと密接に関わる機構であることを解明したが、培養ヒトグリオーマ細胞U87MGを低濃度のTMZで反復処理することで化学療法耐性細胞株を複数分離した。これらの耐性株はTMZ処理に対して一時的なG2期細胞周期停止を示すものと、全く細胞周期停止を示さないものとに大別されたが、前者においてはDNA修復機構、特にDNA相同組み換え修復能が更新していることが疑われ、一方、後者においてはDNAミスマッチ修復機構(MMR)の欠如によってTMZの毒性が発揮されない状況が疑われた。従って、前者においてはG2チェックポイント阻害剤やPARP阻害剤などDNA修復を抑制する薬剤を併用することでTMZに対する再感受性化が認められたが、後者(TMZの細胞毒性の機序であるMMRによる二次性のDNA損傷が生じない)においては同様の処置によるTMZの再感受性化は認められなかった。尚、実験に使用したグリオーマ細胞U87MGではTMZの感受性を左右する因子としてよく知られているDNA修復酵素 O6-methyl DNA metgyltransaferase (MGMT)は発現していないが、耐性株においてもMGMTの発現は認められず、実験的に獲得されたTMZ耐性はMGMTによるものではないと判断された。耐性株分離までの間のTMZ処理期間が長いほど、DNAミスマッチ修復タンパクMSH6の発現低下を認める頻度が高くなった。一方、臨床例についてもTMZ治療後に再発した神経膠腫症例でMGMTの発現上昇は観察されなかったものの、MSH6発現低下は認められたため、前述のin vitroで得られたTMZ耐性機構の獲得機序は、臨床例における腫瘍の薬剤耐性獲得過程を模倣しているのではないかと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TMZによるDNA損傷の機序や細胞内シグナル活性化についての情報が豊富なU87MG細胞を使用して、複数のTMZ耐性株を得た。今後の実験的検証を再現性の高い形で行うことができると予想している。
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今後の研究の推進方策 |
TMZによる細胞毒性機序については既に解明されている部分があるが、本研究ではその知見に反しない実験結果が得られており、更にいくつかのTMZ再感受性化の方法を示唆する知見も得られている。ただし、最も重要と思われるMMRタンパクの発現低下によるTMZ耐性については、臨床応用可能な再感受性化につながる知見は得られておらず、今後の研究課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りに研究を遂行したが、少額の次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した助成金と合わせて、物品費として使用したい。
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