研究課題/領域番号 |
17K10878
|
研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
川端 信司 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (20340549)
|
研究分担者 |
平松 亮 大阪医科大学, 医学部, 講師 (40609707)
古瀬 元雅 大阪医科大学, 医学部, 講師 (70340560)
野々口 直助 大阪医科大学, 医学部, 講師 (70388263)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 脳神経疾患 / 癌 / 放射線 / トランスレーショナルリサーチ / ホウ素中性子捕捉療法 / 輸送タンパク質 |
研究実績の概要 |
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、極めて殺細胞効果の高いα粒子を用いて生物学的に腫瘍細胞を選択的に治療し得るため、正常組織に浸潤性に発育する悪性脳腫瘍の克服が期待されている。BNCTの治療効果はホウ素化合物の種類・投与方法などにも大きく左右される。現在までに臨床試験に用いられてきたホウ素化合物(BSH, BPA)では、組み合わせや投与法の改良で従来の治療を上回る効果を示してきたが、未だ不十分である。そこで本研究では、BNCTのさらなる治療成績向上を目指し、これまでの腫瘍標的とは異なる手法として開発した新規のホウ素キャリアー“輸送タンパク質TSPO標的ホウ素化合物”の有用性に関し検討し、臨床応用への可能性を探る。 BNCT用新規ホウ素化合物として数種の輸送タンパク質TSPO標的ホウ素化合物を作成した。これらの薬剤を用いて悪性神経膠腫の培養細胞に対し、in vitroでの集積について確認・スクリーニングを実施し、TSPO標的ホウ素化合物を用いて腫瘍細胞への集積特性について確認した。脳腫瘍モデルラットにおいては、TSPO標的ホウ素化合物の静脈内投与を実施し、薬剤分布を検討したところ、静脈内投与での脳腫瘍への集積絶対量はやや不十分であるが、正常脳に対する集積比は良好であった。また、Convection enhanced delivery (CED)を用いた投薬では、腫瘍への高い集積を認めている。平成29年度内に原子炉での中性子照射が再開されており、次年度内の細胞並びに動物モデルを用いた実験用マシンタイムを共同利用として申請し採択を受けている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BNCTにおける新たな腫瘍標的ホウ素薬剤として新規開発した“輸送タンパク質TSPO標的ホウ素化合物”の有用性に関し検討し、臨床応用への可能性を探るため、以下の研究計画・方法を立案した。①TSPO標的ホウ素化合物の腫瘍細胞への集積性、②中性子照射による殺腫瘍細胞効果の確認、③動物モデルを用いた薬物動態および最適な投与方法・照射条件の探索、④動物モデルを用いた中性子照射による安全性および治療効果の確認。 これらの研究を通じて、BNCT用の新規ホウ素化合物としてTSPO標的ホウ素化合物の有用性に関し詳細な検討を加え、これにより最適な投与条件を確認し、中性子照射実験を行い臨床応用の可能性を検討する。 平成29年度は以下の実験を計画し、おおむね順調に進んでいる。1:TSPO標的ホウ素化合物(DBP-02等)を用いた腫瘍細胞集積性および抗腫瘍細胞効果の検討、2:TSPO標的ホウ素化合物(DBP-02等)のCED投与時の薬物動態の解明と至適投与条件の検討。次年度以降は予定通り中性子照射に関する研究に移る準備が整った。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度以降の計画は、予定通り以下の如くとした。 1:TSPO標的ホウ素化合物(DPB-02等)のCED投与時の薬物動態の解明と至適投与条件の検討、2:中性子照射に関する実験 中性子照射を用いた治療実験(BNCTへの応用)、3:TSPO標的ホウ素化合物の改良およびその他のアルキルBSH型新規ホウ素薬剤の新規作成 また本申請では、脳腫瘍治療の障壁であるBBBの問題を克服するために新規の薬剤投与手法であるConvection enhanced delivery (CED)を用い、動物モデルに対する他の候補としてデザインした標的ホウ素薬剤の投与も予定している。また、投与方法の最適化としてCED以外の投与との安全性を含めた比較検討を行う。これにより最適な化合物投与条件を確定し、中性子照射実験を行い臨床応用について最終的な検討に入る。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究計画はほぼ予定通り順当に進行しているが、本年実施の研究結果から、次年度予定の動物実験の規模を若干増す計画となっているため。
|