研究実績の概要 |
PCNSL症例に対する初期治療において、大量メソトレキセート療法(HD-MTX)によってCRが得られた患者群(以下「CR群」)と、HD-MTX療法への反応が乏しくHD-MTXを終了した時点でPDと判定されてWBRTを実施した患者群(以下「PD群」)を対象に、CR群に特異的なバイオマーカーの探索を行った。エキソン領域におけるnon-silent mutation (deletion, missense mutation, frame-shift, truncation)およびUTR領域における変異を対象として解析を行い、CR群とPD群とで発現頻度に有意な差を認める変異を抽出すると共に、両群各検体の網羅的な遺伝子発現についてマイクロアレイを用いて定量し、normalizationを行った後に両群間で発現に統計学的な有意差を認める遺伝子を抽出した。 各標本あたり平均約41個(40.7 ± 17.8, Mean ± SD)のnon-silent mutationが検出され、このうちrecurrentなmutationのみを対象にSanger sequencingでvalidationを実施した。その結果、変異の存在が診断精度70%以上でCR症例をPD群と区別できる遺伝子変異はBTG2(B-Cell Translocation Gene 2)のエキソン領域におけるmissense mutationのみであった。UTR regionにrecurrentな変異(>50%)は見つからなかった。 また遺伝子発現解析では、CR群において有意な高発現を示したのはABR, CSDA, B3GALT6, FRRS1, ATXN3, GYS2の6遺伝子で、逆にCR群において有意な低発現を示したのはBCL6, CDC23, BGLAP, HELLS, EHD2, ILDR2の6つの遺伝子であった。
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