研究課題
神経疾患,高齢者では転倒リスクは高いと考えられ,転倒を惹き起こすリスクを早期にしかも定量的に発見するシステムの構築は重要と考えられる.本研究では動的姿勢制御を定量的に測定できるシステムを構築し神経疾患に応用した.パーキンソン病では,運動症状のスコアと転倒恐怖Modified Falls Efficacy Scale (MFES),すくみのスコアGait and Falls Questionnaire (GFQ)は相関を示した.バランスのスケールであるFunctional balance scale (FBS)と転倒恐怖を表す指標であるMFESは相関していた.重心動揺パラメーターの検討では,安静時の重心動揺パラメーターとMFES,GFQに相関を認めなかった.一方,体軸回旋運動の程度とMFESとは相関し,前後重心動揺/体幹回旋運動比は,GFQと相関した.以上より,動的重心動揺のパラメーターが転倒恐怖,すくみのスコアと相関しており,定量的な客観的評価の可能性が示唆された.下肢の痙性による歩行障害を来す痙性対麻痺に対し,バクロフェン髄注療法を行い,術前後での重心動揺を比較した.バクロフェン髄注後FBS,歩行速度は,いずれの症例も変化なしもしくは改善し,足圧中心の位置は術後前方に移動した.動的重心動揺パラメーターでは,術後に体幹反復運動時の左右方向の動揺が増加した.以上より,下肢痙性を主症状とする痙性対麻痺では,バクロフェンによる痙縮の改善により,静的重心動揺では,下肢関節の可動域制限の減少により,重心がより前方になり,体幹反復運動時の動揺が増加した.これは,歩行に必要な重心の連続移動が容易になった可能性が示唆される結果であった.
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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