【目的】頭蓋内腫瘍は、その特性上、弾性率の観点から術前に検討がされることは少ない。核磁気共鳴エラストグラフィー(Magnetic Resonance Elastography:MRE)は、非侵襲的に生体内臓器の弾性率を画像化することが可能な画期的な方法である。走査型超音波顕微鏡(Scannnig Acoustic Microscory:SAM)は通過する音速や音響インピダンスの差を利用して、病理組織切片の弾性率を数値化、画像化でき、組織弾性率の客観的診断方法として確立している。今回、MREより得られた髄膜腫と下垂体腺腫の弾性率と、手術中の腫瘍硬度、SAMから得られた組織弾性率との相関性を評価することで、MREの術前弾性率評価の有用性を検証した。 【方法】2014年9月から2016年3月にMRE撮像後、摘出術を行った22例の髄膜腫、16例の下垂体腺腫を対象とした。MREでの腫瘍弾性率の評価として、平均弾性率(meanSS)と最大弾性率(maxSS)を測定した。さらに、実際の術中の腫瘍硬度(5段階で評価)、走査型超音波顕微鏡(SAM)で得られた組織弾性率との相関性を統計学的に検討した。 【結果】meanSSとmaxSSの平均値は、それぞれ、髄膜腫が2.0±0.8kPa、3.1±1.4kPa、下垂体腺腫が1.5±0.5kPa、2.0±0.8kPaであった。ともにmeanSSとmaxSSは術中の腫瘍硬度と有意に相関しており(p<0.05)、さらに、SAMより得られた組織弾性率とも有意な相関関係を示した(p<0.01)。 【考察】術前MREによる腫瘍弾性率の評価は、実際の術中腫瘍弾性率、SAMより得られた組織弾性率と有意に相関していた。 現在、以上の研究内容、結果をまとめ、論文の作成を進めている。
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