研究課題/領域番号 |
17K10890
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
前澤 聡 名古屋大学, 脳とこころの研究センター, 特任准教授 (90566960)
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研究分担者 |
Bagarinao E. 名古屋大学, 脳とこころの研究センター, 特任准教授 (00443218)
渡辺 宏久 名古屋大学, 脳とこころの研究センター, 特任教授 (10378177)
寳珠山 稔 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (30270482)
中坪 大輔 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (70378165)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | EEG-fMRI / SEEG / MEG / focal epilepsy / epilepsy surgery |
研究実績の概要 |
EEG-fMRI、MEGの新規解析法による正常/異常ネットワークの同定と焦点、伝播経路の推測の検討:EEG-fMRIの新規解析=subsecond analysis(IEDの同定を全チャネル情報をreferenceとして検査の感度を上げる手法)の有用性を焦点性てんかん11症例の術後成績と比較して解析した。SSWAS (spike and slow wave activation map)では通常解析と比較して高率(91%)にBOLD信号が検出され、切除範囲内のBOLD信号の存在と術後成績は正の相関を認めた(感度:83.3% 特異度:75.0% 陽性的中率:83.3% 陰性的中率:75.0%)。MEGではDS解析のひとつであるsLORETA解析に頭部容積モデルの使用と統計(permutation test + FDR補正)を加えた新しい解析法を開発した。術後一年以上経過した症例19例で後方視的に検討した。全体で68.4%、手術予後良好群で84.6%、深部病変においては81.8%で手術切除領域との一致をみた。これらは通常のECD解析で得られる一致率より有意に高かった。EEG-fMRI, MEGともに新規解析法は有用であった。 頭蓋内脳波記録におけるSEEGと硬膜下電極併用法の有用性の検討:研究期間内に当院で術前検査のstep2として頭蓋内電極留置を行なった連続13例で検討した。7例で併用法を行った。発作残存症例は、SEEG単独群では1/1例、硬膜下電極単独群では4/4例、併用群では1/7例であった。残存例では、側頭葉てんかん様の症状を示すが焦点は側頭葉周辺にある、temporal plus epilepsyが多かった。anatomo-electro clinical correlationを頭蓋内深部と皮質の両面より検討する場合にはSEEGと硬膜下電極の併用法が有用であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は①EEG-fMRI、MEGの新規解析法による正常/異常ネットワークの同定と焦点、伝播経路の推測、②てんかん外科コネクトームマップの作成、③SEEGによる検証、の3つに大別される。 ①に関しては昨年度に引き続き、焦点診断や伝播経路推測の為の画像解析に改良を加え二つの新規解析を考案し、評価を焦点性てんかんで手術結果が分かっている症例を焦点が明確であるとみなしてこれらを対象として、後方視的に検討する事でその妥当性と有用性を証明した。結果はてんかん学会など様々な学会で報告した。解析は既に終了して3本の論文が研究期間内に報告可能と考える。一本は既に投稿が済み、二本は作成中である。この様な状況より①に関しては約8割の進行程度と自己評価する。 ②に関して、共同研究者との複数回のミーティングを通して焦点皮質の情報のみでなく白質の情報の評価が必要と考えられた。DTIのデータを基にfixel-based analysisを行う事で、てんかん特有の線維連絡と正常の線維連絡とを分別する事が必要と思われた。これについて現在解析を開始している段階で結果はまだ得られてない。個人解析として評価可能かの問題もあり、現在学会等を通じて情報収集している。この項目に関しては3割から4割程度の進行と自己評価した。 ③に関しては実際に外科治療を行う症例の数にも依存が大きいが、2018年度はまずまずの症例数で評価が可能であった。SEEGは点の情報としては複数の領域から脳波情報を得られる事もあり十分と考えるが、伝播経路を直接評価するという線の情報としては不十分である点が、我々研究グループ内でも、外部の報告でも指摘されている。この改善案として硬膜下電極との併用を我々は施行し、良好な成績を得ている。この項目に関しても8割程度の進行と考える。以上より全体としては6-7割程の進捗状況と考え概ね順調と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
てんかん焦点診断と伝播経路の可視化に必要な新規解析を幾つか考案して学会等で報告したが、その論文化を最終年度内に行う。MEG新規解析については論文を提出済でありEEG-fMRIについては今秋を目途に提出する。安静時機能的MRIを使ったhub解析については、更にDCM(dfynamic causal modeling)の評価も加え年度内に提出する。現在進行中のDTIデータのFixel based analysisであるが、データ収集としては終わっており、後方視的に解析する環境は整ったので年度内に解析を終了し学会等で報告する。 これらの解析結果をてんかん患者個々の脳モデル内で統合し、直観的に理解が可能なコネクトームマップを作成する。現在その試作モデルは作成済であるが、これは安静時fMRIのデータと解剖学的構造画像との統合に終わっている為、更にFBAの結果、DCMの結果を重畳する様に改良が必要である。その妥当性については切除範囲とSEEGによる発作時、発作間欠時の電気生理学的情報と比較検討が必要で、既に大半の評価は済んでいるが、残りの評価を行い、改良を重ねながら実用可能なコネクトームマップを年度内に作成する。必要なハードとしてはほぼ整っているが、新規解析やより直観的なグラフィックスは日々新しくなりcatch upが難しく予算的にも高額となる。予算とも照合して可能な中で最善のものを作成し報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度では、MRIやMEGによる新規解析用の画像解析システムを構築の為のPCや外付けハードディスクを購入した。また成果報告の為の論文の校正、カラー印刷代やオープンアクセスの費用も支出した(論文二編)。てんかん患者のMRI画像やMEGデータ収集を名古屋大学の脳とこころのセンター大幸地区の研究装置で行い、この施設利用費も支出した。これらはほぼ予定通りであるが、当該年度では撮像した被験者数が予定よりやや少なかった為、次年度へ469,879円繰り越された。 次年度は469,879円使用予定である。まず第一に更なる10名程の患者の施設利用費に使用される。施設利用費は対象患者ひとりにつき25,000円程度かかる為、合計250,000円程度必要である。また現在執筆中の論文の校正、カラー印刷代、オープンアクセス費用にも費やされる。これに15万円程度は必要と予想される。その他、成果報告として第77回日本脳神経外科学会総会、第53回日本てんかん学会に出席し報告する予定である為、この二件の学会の参加費、出張費も次年度使用額より支出する予定であり、50,000円から70,000円程度必要である。これらの合計は、ほぼ次年度使用額となる。
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