研究課題/領域番号 |
17K10894
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
押野 悟 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (40403050)
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研究分担者 |
貴島 晴彦 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (10332743)
山本 祥太 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (20795728)
三好 智満 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (70314309)
中村 元 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (80533794)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | てんかん / 皮質興奮性 / 白質連絡 / 白質刺激 |
研究実績の概要 |
本研究は、大脳の白質を電気刺激することで皮質の抑制機能が障害され、てんかん波が誘発・増強されるかを動物実験で検証するものである。実験では、刺激する白質線維として脳梁を選択し、それが投射する皮質の興奮性に与える影響を解析する。皮質興奮性の指標として、短時間のやや強い電気刺激を与えることで誘発されるてんかん発作時様の波形(AD波; after discharge)の出現頻度、持続時間や強度を設定した。そのためには、皮質脳波を計測しながら同時に刺激できる形状の電極が必要で、平成29年度の前半にその作成に取り組んだ。刺激装置は既存のものを使用した。 刺激兼計測用の電極が完成したため、平成29年度後半に2匹で実験を行った。1例目では、半球間裂を外科的に剥離し脳梁に刺激電極を刺入する手法を用いたが、深部の半球間の癒着が強く、また架橋静脈もあったため操作に難渋した。最終的に刺激する段階まで進んだものの皮質脳波も不安定でAD波も想定通りには誘発されなかった。先行研究も同手法で行っていたが、今回のように半球間裂の癒着や静脈などの個体差で大きく難渋する例もあったため、2例目は定位的手法を用いて脳梁の外側で脳梁の投射線維を含む領域に刺激電極を刺入する方法に変更した。その結果、2例目では安定して脳梁が刺激できるようになった。ただ皮質刺激でAD波は誘発されたものの、波形は一定せず、特にAD波を誘発するための刺激が2.0Vを超えると計測した波形がスケールアウトし不安定になってしまった。電極に電荷が蓄積するなどの問題が想定され、現在アース配線や電極上の刺激の配線を変えるなどの対策を検討中である。平成30年度はまず刺激兼計測電極を改良した後、実験を計画通り進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験自体はおおむね計画通り進展したが、刺激兼計測用の電極に上述の問題があり、改良する必要がある。また実験動物の確保でも問題が生じた。つまり、平成29年度は予定していた業者からの実験動物の入手が困難との通知をうけ、最終的に鳥取大学の協力で実験が実施できた。平成30年度に向け、現時点で4匹は入手できる見込みがついたが、以降も同様の問題は想定される。実験動物の価格や運搬費・飼育費などの見通しを立てるのが難しいため、平成29年度の研究費の一部を次年度に繰り越しせざるを得なかった
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今後の研究の推進方策 |
脳梁は安定して刺激できる見込みになったため、本年度は脳表の刺激兼計測電極の改良したのち、4匹で実験を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国内業者から実験動物の入手が難しいとの通知を受け、米国より空輸での入手を計画せざるを得ない状況だった。その場合は費用が予定をかなり超過することになったが、幸い鳥取大学の協力により予定額の範囲内で2匹入手して、実験に用いることができた。ただ、平成30年1月の時点で次年度の実験動物の入手予定が定まらず、上記の空輸も想定して研究費の一部を次年度に繰り越すこととした。 平成29年度末に国内業者から実験動物が4匹確保できたという通知があったが、一括で購入し当大学の動物施設で飼育するため、その費用を計上する必要がある。 繰り越し分を含む平成30年度の研究費は、改良する刺激兼計測電極の他、実験動物の飼育代、運搬費用、実験に用いる麻酔薬やモニタリングに用いる消耗品に使用する。更に実験器具の更新、データの解析ソフトや解析機器、成果発表と情報収集にも使用する予定である。
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