研究実績の概要 |
人工多能性幹細胞(以下iPS細胞)と嗅粘膜由来組織との共培養を行うに先立ち、嗅粘膜の軸索誘因作用については不明な点が多い。そこで、今回、我々は後根神経節(DRG)と嗅粘膜組織の共培養を行うことにより、嗅粘膜による軸索誘因作用について検討した。 【方法】SDラットより採取した嗅粘膜(OM)を酵素処理し、嗅上皮(OE)と基底層(LP)に分離した。DRGとカルチェ―プレート上でOM,OE,LPと各々共培養した。それぞれにおいて軸索誘因作用があることを確認した。神経栄養因子による影響を検討するため、抗神経栄養因子抗体を培養液中に添加し共培養した。また、培地中の神経栄養因子をELISA法を用いて測定した。次に、細胞外マトリックスによる影響を検討するため、培地に種々の抗細胞外マトリックス抗体を添加、もしくは、細胞外マトリックスを分解する酵素処理をした組織を作成し、共培養をした。【結果】OM,LPには同等程度の軸索誘因作用があったが、OEでは誘因作用はあるものの前2者に比べると弱かった。伸長軸索は主にLP上の嗅神経鞘細胞配列上を伸長した。抗NT-3抗体および抗NGF抗体を添加した培地では軸索誘因効果は減弱した。LPのみを培養した培地からはNGFとVEGFが検出された。抗PSA-NCAM抗体を添加すると有意に軸索誘因作用が減弱し、PSAの分解酵素であるEndo-Eを処理をしたLPと共培養すると有意に軸索誘因作用が減弱した。【結語】嗅粘膜組織は軸索伸長誘因効果を有し、その効果はNGFをはじめとする神経栄養因子および細胞外マトリックスであるPSA-NCAMを介していることを示した。
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