研究課題
われわれはこれまでに、急性期から慢性期にかけての脊髄損傷(SCI)動物モデルに対して骨髄間葉系幹細胞(MSC)を経静脈的に移植し、運動機能の回復が得られることを報告してきた。SDラットのT9高位の脊髄をIHインパクターで圧挫し、重度SCIモデルを作製した。損傷10週後、無作為にコントロール群、MSC群に分け、前者には培養液のみを、後者にはMSC100万個を大腿静脈より投与した。行動評価は (Basso Beattie Bresnahan)BBBスコアを用いて損傷後20週まで行ったところ、MSC群はコントロール群よりも有意な麻痺の改善が得られた。移植されたMSCによる機能回復のメカニズムとして、損傷局所におけるsprouting などに加えて、損傷上位に位置する①脊髄および②脳において、MSC移植によるplasticity が亢進し、新しい神経回路が構築され、神経機能の改善に寄与する可能性があると考えた。MSC移植を行った脊髄損傷ラットモデルに対して、運動機能の回復が現れた移植3日目に大脳皮質運動野の網羅的遺伝子解析を行ったところ、複数の遺伝子の発現量に変化が見られ、これらの遺伝子の多くは神経再生、plasticityの賦活化に関与する可能性がある遺伝子であることを発見した。特に、コントロール群と比べてMSC治療群で発現が高かった7個のcoding遺伝子の発現量は、運動機能(BBBスコア)とのピアソンの相関解析の結果、高い相関があることが判明し、これを報告した。
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Journal of neurotrauma
巻: 36 ページ: 411, 420
10.1089/neu.2018.5793.
医学のあゆみ
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