研究課題/領域番号 |
17K10903
|
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
村田 英俊 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (40398524)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 頚髄損傷 / 脊髄症 / エリスロポイエチン / 治療 |
研究実績の概要 |
近年、急性脊髄損傷に対して造血系サイトカイン(顆粒球コロニー刺激因子G-CSF/エリスロポイエチンEPO)が注目を集めている。私たちは慢性脊髄圧迫モデルにおいてG-CSFが著効することを明らかにし、EPOにおいても良好な治療効果を示しつつある。「圧迫性脊髄症」と「頸椎外傷」からなる非骨傷性頸髄損傷において、これらの造血系サイトカインは奏功する可能性が高く、臨床上の安全性も高い。ラット慢性脊髄圧迫モデルおよび非骨傷性頸髄損傷モデルを用いて、同損傷に対するこれらの造血系サイトカインの効果を明らかにし、最善の治療基盤を作ることを目的とした。 これまで本研究では、EPOによる慢性脊髄圧迫モデルに対する効果を検討してきた。慢性圧迫によるミエロパチー進行時(慢性圧迫後7週)において、EPO(5000iu/kg)では著明な運動機能改善を認めた(P<0.001)。運動機能改善効果は、投与後3週を最大として、5週目より徐々に低下した。しかし、EPO 群では16週目でも、コントロール群(生食投与)に比べて有意に運動機能を保持した(P<0.0001)。 前角運動ニューロンは、コントロール群に比べて有意に細胞数が温存された(P<0.0001)。TUNEL法によるアポトーシス細胞の評価では、コントロール群に比べて有意に少なかった(P<0.0001)。脊髄組織のEPO濃度を測定したところ、EPO投与群で有意に組織濃度が高かった。これにより、EPOは造血効果による血流改善のみならず、EPO自体がニューロンに対して直接機能改善、保護作用を有していることが示唆された。これらの成果は国際誌投稿中である(under revision)。現在、EPO投与の有無によるエリスロポエチン受容体の発現の変化、ニューロンマーカー(5HT, GAP43, Synaptophysin)の発現の変化、脊髄変性の変化(APP発現の低減)について検討中である。また、予備的であるがEPO髄腔内投与により低容量でより高い効果が得られつつあり、同治療実験も進行中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
圧迫性脊髄症および脊髄損傷に対するエリスロポイエチンの効果は明らかとなり、現在、国際誌論文投稿し、revised stageとなっている。また、投稿先からのリクエストがあり、追加実験を行っている。さらにより効果的な投与法を見いだし、有効性を明らかにしつつある
|
今後の研究の推進方策 |
投稿した論文からの指摘により、現在、EPO投与の有無によるエリスロポエチン受容体の発現の変化、ニューロンマーカー(5HT, GAP43, Synaptophysin)の発現の変化、脊髄変性の変化(APP発現の低減)について検討中である。 また、EPOは30.4Kdとやや大きな分子量をもち、血中からの髄液移行性が困難な場合があるが、経脳室的髄腔内注入療法の確立することができ、低容量での髄注治療が可能となった。 これまでの皮下注モデルに加え、髄注モデルについても運動機能評価(1週毎)(脚力、ローターロッド)、病理学的評価(HE染色、KB染色、IMAGE Jによる挫傷部のマッピング、前角細胞数のカウント)及び、電気生理学的評価(神経伝導速度と後脚大腿における運動誘発電位)を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
H30年度は従来の動物実験に対する解析に経費を割いたが、各種抗体や特殊試薬などの一部は、従来備わっていたものが流用できたため、新規購入を要せず、次年度使用が生じた。H31年度以降は新規実験、および新規治療モデル(経脳室的髄腔内注入療法)も運用されるため、それに充当する予定である。
|