研究実績の概要 |
特発性正常圧水頭症(iNPH)は、パーキンソン症候群と臨床症状が類似すること、また、しばしば両者は併存することから、臨床症状と画像所見のみでは両者の鑑別は困難である。現状では両疾患の原因は不明であり、特異的な定量検査法はない。そこで本研究では、髄液中で含有量が異なるsmall RNAを同定する。これは高感度の定量検査法の開発のみならず、両疾患の病態解明、更に、治療法のないパーキンソン症候群の新たな治療法の開発にも寄与する。 1iNPHとパーキンソン症症候群の鑑別診断に有効miRNAsを検証した。その結果iNPHとパーキンソン症候群併存例を鑑別診断できるバイオマーカーとしてmiR-4274が同定した。髄液中のmiR-4274は、パーキンソン症症候群ではiNPHと比較して有意に低下(p < 0.0001)しており、AUC=0.908と非常に鑑別能力の高いことが明らかとなった。IPA解析より、miR-4274の親和性の高い遺伝子として、ドーパミン受容体に関連のあるSAC18A2(VMAT2; the vesicular monoamine transporter 2)が同定された。更に、髄液中miR-4274はDaT scanのSBR(specific binding ratio)と負の相関関係(r = -0.494, p = 0.044)を示し、ドーパミン神経系の障害を反映していると予想される。 2;進行性核上性麻痺(PSP)とiNPHの鑑別診断可能な既知のmiRNAsバイオマーカーをhuman miRNome miRNA PCR Arrayを用いて探索した。その結果、iNPHとPSPを鑑別診断できるバイオマーカーの候補としてmiR-330-3p, miR-548d-3p, miR-327-3p, miR-511-5p, miR-500a-5p, miR-526-3pが同定された。
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