研究実績の概要 |
特発性正常圧水頭症(iNPH)と進行性核上性麻痺(PSP)の鑑別診断可能な髄液バイオマーカーの探索を行った。 昨年までの研究で、PSPで特異的に高い発現を認めた6個のmicroRNAsが候補として抽出された。本年度は、異なるコホートにて上記6個のmicroRNAsをqRT-PCR法にて定量測定し、iNPHとPSPを鑑別診断できるバイオマーカーの候補としてmiR-330-3p, miR-327-3p, miR-500a-5p, miR-525-3pを同定した。iNPHに対するPSPでの発現量はmiR330:2.51倍、miR372:3.06倍、miR500:2.86倍、miR525:4.37倍であった。AUCは、それぞれmiR330:0.750、miR372:0.815、miR500:0.830、miR525:0.920であった。上記4個のmicroRNAの下流に位置する遺伝子情報を基に、パスウエー解析を行い、これらのmicroRNAは、PTPR familyとSLC familyの遺伝子発現に関係していることが推定された。代表してPTPRQの髄液中蛋白濃度を各特異抗体を用いたELISAを用いて測定した。iNPH27例、PSP13例、パーキンソン病(PD)12例、アルツハイマー病(AD)15例、健常高齢者(NC)10例の各群にて、PTPRQはPSP群で1.22 ng/mlであったのに対し、PD群0.51 ng/ml、AD群0.55 ng/ml、iNPH群 0.45 ng/ml、NC群 0.30 ng/mlであり、全ての群でPSP群に対して有意に低値を示した。PSP群とiNPH群は、カットオフ値0.585 ng/mLで感度85%、特異度82%、AUC 0.897で鑑別可能であった。PTPRQはiNPHとPSPを鑑別する髄液バイオマーカーとして有望であると考えられる。
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