研究課題/領域番号 |
17K10918
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
奥野 洋史 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (00572025)
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研究分担者 |
五十嵐 和彦 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00250738)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Bach1 / 筋損傷 |
研究実績の概要 |
平成29年度は野生型およびBach1ノックアウト(Bach1-KO)マウスを用いて筋損傷への影響を解析した. 1.野生型とBach1-KOマウスにおける非損傷時の体型や筋組織像に違いはなかった. 2.野生型マウスにおいて,カルジオトキシンを用いた筋毒損傷モデルを製作し,損傷後の変化を経時的に観察した.損傷後3日目に筋線維の多くがいびつとなり,その数も減少した.損傷後7日目には新たに中心核を有する筋線維が出現し,損傷した筋線維はほとんど取り除かれ、新たに形成された筋線維に入れ替わった.損傷後21日目にはその筋線維は損傷前より腫大した.この経過をBach1-KOマウスと比較した所,損傷3日目では大差は見られないものの、損傷後7および21日目の筋線維の面積はBach1-KOマウスで小さかった.これらの結果からBach1-KOマウスの筋は野生型マウスと比較し、損傷後の筋再生能が低下していることが判明した. 3.野生型マウスの筋損傷前後における筋でのBach1のmRNAおよびタンパク質発現量の変化を調べた.前脛骨筋における Bach1のmRNA量は非損傷筋に比較し,損傷後に次第に低下したが,Bach1タンパク質は,非損傷筋では殆ど見られないのに対し,損傷後3日目に急激に増加し,損傷後7日目にその発現量は減少した.このことから,Bach1は筋再生の早期において重要な役割を担っていることが推測された. 4.Bach1-KOマウスにおいて筋毒による損傷筋の再生悪化がみられたことから,Bach1-KOマウスとWTマウスの損傷前、損傷後3および7日目の筋組織から抽出したトータルRNAを用いて,筋分化決定因子と呼ばれる4遺伝子(MyoD、Myf5、Myogenin,MRF4)の発現を調べた.しかし,筋組織中におけるMRFs mRNAの発現にBach1-KOマウスと野生型マウスの間で差はなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vivoの解析により,Bach1-KOマウスの筋は野生型マウスの筋と比較し、損傷後の再生能が低下していることが判明した.この結果は仮説と正反対の結果であるが,Bach1は筋再生の早期において重要な役割を担っていることが確認できたため,このBach1が筋細胞分化にどのような影響をもたらすのか,当初の計画通り,in vitroで確認する.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度はBach1が筋芽細胞の分化に及ぼす影響をin vitroの実験により確認する.すなわち,マウスの筋芽細胞株であるC2C12細胞を用いて分化誘導を行う.これらに随時,Bach1のノックダウンを行い,細胞分化への影響を評価する. 具体的にはsiRNAを用いBach1のノックダウンを行った後にC2C12細胞を増殖させ,分化を誘導し,誘導後2,4,6日目で分化における酸化ストレスの評価を行う.ウェスタン・ブロット法やRT-qPCR法でHO-1,筋分化マーカーであるpax7,myoD,myoG,MRF4,MyHCを測定し,また酸化ストレスマーカーであるカルボニル化蛋白を測定,、筋分化や酸化ストレスの変化を評価する.また、H2O2を加えた酸化ストレス下にも分化誘導を行った上で同様に評価し,酸化ストレス増強下の筋芽細胞におけるBach1の働きを評価する.また,プラセミドを用いHO-1過剰発現を行った後にC2C12細胞を増殖・分 化させ,筋分化や酸化ストレスを評価する。さらに,H2O2を加え、酸化ストレス増強下の筋芽細胞におけるHO-1の働きを評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の予算1927282円は全て消耗品の購入に当てたが,発注が滞った消耗品分が残金として生じた.次年度は残金と合わせて,消耗品の購入と実験機器メンテナンスに使用する予定である.
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