研究実績の概要 |
研究の目的:軸索伸長過程において不可欠な役割を果たす成長円錐に着目し、発達期ラット脳由来の成長円錐膜画分の質量分析(リン酸化プロテオミクス解析)を施行し、成長円錐部膜各分にて高頻度に認められたMicrotubule-associated protein 1B(MAP1B)のリン酸化に注目した本研究では、MAP1BのS25とS1201リン酸化と軸索伸長・再生との関連について解析することを目的とした。
研究成果:マウス胎仔大脳皮質初代培養細胞にて、MAP1Bリン酸化は軸索でより高いレベルとなっていることが認められた。胎仔脳の切片にて、リン酸化は軸索が豊富にある構造に特異的に認められ、発生過程での発現過程の変化を確認した。 マウス坐骨神経損傷モデル(圧挫損傷、離断損傷、離断損傷後縫合モデル)を作成し、損傷後組織学的評価を行い、軸索再生マーカーとして既報の抗STMN2 (SCG10) 抗体と比較した。 圧挫損傷モデルで、損傷部でpS25-MAP1BとpS1201-MAP1Bの検出レベル上昇を認め、既報の抗STMN2(SCG10)抗体と同様の変化を認めた。また、離断損傷モデルでは、損傷部遠位側では、リン酸化レベルの上昇を認めなかったが、離断損傷後縫合モデルにおいては、縫合遠位側にもpS1201-MAP1Bの検出レベル上昇を認め、SCG10の発現と同様の変化を認めた。 今回、成長円錐のリン酸化プロテオミクス解析の結果を足掛かりとして、MAP1Bリン酸化部位に対する特異抗体を使用し、染色性を検討した。再生時の神経軸索にてS25, S1201のリン酸化レベルが高く、軸索伸長と再生への関与が示唆された。
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