研究実績の概要 |
後縦靭帯骨化症(OPLL)病理組織の免疫組織化学染色(IHC)を継続しており、CDC5Lは骨化部周辺の軟骨様変性靭帯細胞とOPLL骨化部間質周囲の骨芽細胞様細胞の両者に発現を認めた。そもそもOPLL病理組織に”内軟骨性骨化”様式が存在するのか、マーカー(SOX9, COL2A1, COL10A1)蛋白のIHCを行ったところ、確かに軟骨様変性靭帯細胞に3者の発現を検出でき、これはCDC5L陽性部位でもあった。In vitroでCDC5Lの発現解析に加えて、siRNAノックダウンによる骨・軟骨細胞分 化への影響の検討を継続した。Cdc5lをノックダウンすると骨髄間質細胞ST-2とMC3T3-E1細胞の骨芽細胞分化系では、分化マーカーがRunx2から一貫して発現亢進し、ALP染色も増強され骨芽細胞分化が亢進した。C3H/10T1/2とATDC5の軟骨細胞分化系では、軟骨特異的Col2a1が著明に減少し、軟骨基質マーカーalcian blue染色も減弱し、分化が抑制された。この様に骨芽細胞と軟骨細胞で相反する役割を担う古典的Wntシグナルが、CDC5Lの一つの作用点である可能性を考え、レポーター(TOP flash)の解析をした。その結果CDC5Lは、シグナル伝達因子β-cateninやWNT3A添加で増強したWNTシグナル活性を低下させた。Cdc5lのsiRNAは、ST-2細胞において内因性β-catenin蛋白を増加させた。軟骨細胞分化系では、Cdc5lのsiRNAは、PthrpとCdk1のmRNA発現を亢進したので軟骨細胞の分化成熟に抑制的なPTHrP/Cdk1経路を抑制する事で、CDC5Lは軟骨細胞分化に促進的に働くと考えられた。以上より、CDC5Lは、OPLLの内軟骨性骨化過程に発現し促進的に働く増悪因子であり骨軟骨前駆細胞から軟骨細胞分化への分子スイッチと考えられる。
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