研究実績の概要 |
科学研究費助成事業を用いて行ってきたThe Wakayama Spine Studyでは、現在まで全脊柱MRIを用いた椎間板変性の全脊柱における有病率、そして分布と椎間板変性が加齢や肥満と強い関連があることなどを過去に多数報告してきた(Osteoarthritis and Cartilage 2014, PLOS ONE 2017)。さらに椎間板変性はModic変化と組み合わさることにより強い腰痛を起こす可能性があることを明らかにしてきた(Spine Journal 2015)。本年度は、香港大学との共同研究においてHigh Intensity Zone(HIZ)という椎間板内の繊維輪の損傷についてMRIの形態的変化をAnterior Round type, Posterior Round type, Fissure type, Vertical type, Rim type, Enlarged typeの6つに分類分けを行った。さらにT1強調画像およびT2強調画像での輝度変化の違いにおいても分類しThe Wakayama Spine Study約800名の一般住民においての有病率を捻出した。このHIZはAnterior typeは上位腰椎に多く、Posterior typeは下位腰椎に多いことが判明し、Modic変化との有意な関連が明らかになった。 このHIZは腰痛との関連があることが最近話題となっており、The Wakayama Spine Studyで作成した上記の分類を香港大学の一般住民コホートであるHong Kong Degenerative Disc Studyの1414名に対して腰痛、腰痛関連生活障害そして坐骨神経痛との関連を検討した。その結果、多椎間にわたるHIZは有意に腰痛や腰痛関連生活障害と関係があることを明らかにし、国際腰椎学会(ISSLS 2018)や日本脊椎脊髄病学会2019に報告そしてインパクトのある国際雑誌PLOS ONE 2018に掲載した。本データは非常に重要なものであり今後の腰痛関連疾患の基本データとなる。さらにこの共同研究は引き続き行う予定であり、より大きな国際研究となる。また今年も新たな縦断調査を行う予定である。
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