研究課題/領域番号 |
17K10939
|
研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
谷口 亘 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (20453194)
|
研究分担者 |
西尾 尚子 和歌山県立医科大学, 医学部, 特別研究員 (40648359)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ドーパミン / 脊髄後角 / パッチクランプ法 / D1-like受容体 / D2-like受容体 / 神経障害性疼痛モデル |
研究実績の概要 |
本年度は神経障害性疼痛時にドーパミン神経系が脊髄後角ニューロンのシナプス伝達に及ぼす作用をドーパミン受容体サブタイプ別に検討した。神経障害性疼痛モデルラットより作成した脊髄横断スライスにホールセルパッチクランプ法を適用し、膜電位を-70mVに固定の上、脊髄後角ニューロンから記録を行った。神経障害性疼痛モデルラットはspared nerve injury (SNI)モデルを使用した。安定して記録のできた合計23細胞に対して、ドーパミン及びD1-like受容体選択的作動薬SKF38393、D2-like受容体選択的作動薬Quinpiloleをそれぞれ100μMの濃度で3分間灌流投与実験を行い、膜電流の変化を観察した。5pA以上の変化を有意な変化とした。ドーパミン灌流投与により過分極を示す外向き電流が認められた細胞は16細胞中9細胞(56.3%)であった。その振幅の平均は、8.6±1.0 pAであった。脱分極を示す内向き電流を認めた細胞はなかった。D1-like受容体選択的作動薬SKF38393で過分極を示す外向き電流が認められた細胞は16細胞中3細胞(18.8%)で、その振幅の平均は、11.17±4.29 pAであった。一方脱分極を示す内向き電流は16細胞中5細胞(31.3%)で、その振幅の平均は10.98±3.21pAであった。D2-like受容体選択的作動薬Quinpiloleでは、外向き電流が認められた細胞は12細胞中4細胞(33.3%)で、その振幅の平均は、15.33±7.02であった。内向き電流が認められた細胞は12細胞中3細胞(25%)で、その振幅の平均は、8.97±2.43 pAであった。以上の結果を正常ラットから作成した脊髄横断スライスより得られた結果と比較すると、D1-like受容体選択的作動薬、D2-like受容体選択的作動薬共に、脱分極を示す内向き電流の発生割合が増加していた。神経障害性疼痛時においてドーパミン神経系は正常時と異なる作用を持つ可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
正常ラットと比較して神経障害性疼痛モデルラットにおける脊髄後角ニューロンに対しドーパミン神経系は、D1-like受容体、D2-like受容体における脱分極作用の割合を増加させた。脊髄後角ニューロンにおける脱分極の作用は疼痛増強を意味する。正常ラットにおける脊髄後角ニューロンにおいてドーパミン神経系は主として鎮痛作用を有していると思われるが、神経障害性疼痛時におけるドーパミン神経系は鎮痛作用ではなく、疼痛増強作用に変調する可能性が示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は神経障害性モデルラットを使用し電気生理学的手法を用いて脊髄後角ニューロンの膜電流を検討した。次年度は引き続き、正常ラット及び神経障害性モデルラットの2群における脊髄後角ニューロンの興奮性シナプス後電流に対する影響等も詳細に解析していく。またD1-like受容体、D2-like受容体の作動薬・拮抗薬を髄注した場合のアロディニアの改善やあるいは増強の有無について動物行動学的に検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究計画と実際の進捗状況に若干の差が生じ、未購入機器などがあるため。 次年度の研究計画に従い、必要な研究機器や動物・試薬等の消耗品に使用する予定。また研究成果に応じて、国内外での学会等で研究成果を発表・発信する。
|