本年度は昨年度までの結果に引き続き、追加実験を行った。ドーパミン神経系が脊髄後角ニューロンのシナプス伝達に及ぼす作用をドーパミン受容体サブタイプ別に検討した。さらに神経障害性疼痛モデルラットと正常ラットとでの反応の違いを解析することで、ドーパミン作動神経系に変調を来していないか検討した。神経障害性疼痛モデルラットはspared nerve injury (SNI)モデルを使用した。正常ラットとSNIモデルラットから脊髄横断スライスにホールセルパッチクランプ法を適用し、膜電位を-70mVに固定の上、脊髄後角ニューロンから記録を行った。 ドーパミン及びD1-like受容体選択的作動薬SKF38393、D2-like受容体選択的作動薬quinpiloleをそれぞれ100μMの濃度で3分間灌流投与実験を行い、膜電流の変化を観察した。正常ラット群およびSNIモデルラット群それぞれにおいてドーパミン、quinpirole、SKF38393に対して5 pA以上の外向き電流、内向き電流の反応を示した割合、おそびその振幅の平均を検討した。この中でquinpiroleに対する反応に注目すると正常ラット群と比較するとSNIモデルラット群において外向き電流を発生するニューロンが減少し、内向き電流を発生する率が21.4%から42.3%に増加し、その振幅も-13.4 pAから-29.7 pAに増強していた。
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