研究課題
運動器の加齢変性に伴う機能低下に対する酸化ストレス制御の有用性を検証するために以下の3つの研究体系を立ち上げて同時進行している。①順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター整形外科において腰痛や膝痛または下肢の筋力が弱くなることや腰の曲がりを自覚され歩行が不安定になったことを主訴として来院した患者を運動器の総合的評価、病態や病名の診断していくロコモ外来を開設し、骨粗鬆症や変形性膝関節症、変形性腰椎症や腰部脊柱管狭窄症、サルコペニアといった退行変化を評価した。100名の被検者の血液を採取し酸化ストレス度、抗酸化能を測定した。②膝軟骨や肩腱板に進行した変性を有する患者の人工関節置換術や腱板修復術の際に軟骨や滑膜、腱板の変性して切除する部分を採取した。変性と酸化ストレスの関係を調べるために組織中のスーパーオキシド発生量とその解毒触媒酵素であるSOD活性を測定した。スーパーオキシドは採取した組織の凍結切片をスーパーオキシド特異的蛍光試薬であるdihydroethidium(DHE)で染色し蛍光強度を測定した。その後組織をホモジナイズしSOD活性キットを用いてSOD活性を測定した。③SOD活性を高める効果があると期待される天然メロン抽出物GliSODinの臨床効果を検証すベく、GliSODin(目標n=20)またはプラセボ(目標n=20)の2群に分ける2重盲検試験を行っている。6ヶ月投与(500mg(6粒)/日)におけるGliSODinのSOD活性や抗酸化能に対する効果、酸化ストレス度の変化、SOD活性化による運動機能、QOLの変化を調査する。
2: おおむね順調に進展している
今年度は上記研究の②において結果が得られた。手術検体において得られた検体のSOD活性とスーパーオキシド発生量測定をしたところ、末期変形性膝関節症の滑膜、軟骨においてSOD活性は有意に低かった。OA関節軟骨および滑膜でDHE染色の蛍光強度はいずれも有意に増加し、SOD活性は有意に低下を認めた。また腱板におけるDHE染色の蛍光強度は変性程度と正の相関を認め断裂群で有意に増加していた。しかしSOD活性は断裂症例において有意な増加を認めた。ヒトOA軟骨および滑膜、腱板においてスーパーオキシド発生量は変性症例で有意に高かったが、SOD活性の動向は一定ではなかった。組織特性や患者背景、病期の違いなどが考えられたが結論には至っていない。
検体の採取、測定は概ね終了しているのでデータの解析と発表、論文化を推進していく。①は現在解析中で今年度中に論文化の見込みである。②の膝関節軟骨、滑膜に関しての結果は論文掲載に至った。肩腱板に関しての結果は現在、論文投稿中である。③被検者リクルートは目標のn=20に近づいている。こちらも今年度中に解析して論文化を目指している。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
PLoS One
巻: 13 ページ: e0203944
10.1371/journal.pone.0203944
Sci Rep.
巻: 8 ページ: 7229
10.1038/s41598-018-25348-1
JSES Open Access
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10.1016/j.jses.2017.11.003