研究実績の概要 |
脊髄損傷に対するヒト骨髄間葉系幹・前駆細胞(hMSCs)の有用性が基礎や臨床試験により明らかになってきた。hMSCs は移植後、損傷部位へ遊走(ホーミング)すると示唆されているが、その分子細胞間機構は不明である。さらに、脊髄損傷後の治療法であるリハビリテーションとの相互作用も十分に理解されていない。そのため、当該研究は次の3点の疑問の解決を目的に行うために計画された。1)hMSCsはどのように損傷部位へホーミングするのか?2)hMSCs のホーミングは脊髄損傷の抑制に必須か?3)hMSCs の脊髄損傷抑制と運動療法の併用は機能回復に有用か?これらの解決のため、当該年度は脊髄損傷動物の作成を行い,脊髄損傷後におけるマクロファージ・マイクログリア等の食細胞の遊走にかかわりが深いとされるケモカイン(CCL2, CCL3, CCL4, CCL5, CCL7, CXCL1, CXCL2,)とそのレセプターの脊髄における遺伝子発現の変動をおこなった。脊髄損傷14日後までこれらの遺伝子の発現を定量的PCRで定量するとCCL5を除くすべてのケモカインは損傷1日後に有意な増加を認めた。CCL2, CCL7, CXCL1およびCXCL2は7日後まで低下した。CCL3は14日間高値を示した。CCL5は損傷14日後急激な増加を認めた。 一方,ケモカインレセプター(CCR1, CCR2, CCR3, CCR5, CXCR2)はすべて損傷1日後より増加した。CCR1, CCR3とCXCR2は損傷7日後まで低下し,CCR2は7日以降にピーク時の半分ほどに発現は低下したが14日後まで有意さを認めた。一方,CCR5の発現は損傷14日後まで持続的に高かった。
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