研究実績の概要 |
昨年度までに再発性絞扼性神経障害などに対し行われる、Vein Wrapping術の痛覚過敏抑制機序の研究を行い、veinから放出される塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)と神経内に発現するHeme Oxygenase-1(HO-1)が機序の一旦を担う可能性を示した。本年度はVeinの代替としてbFGF添加コラーゲンシート(bFGF/CS)を作成し、損傷神経に局所投与したときの疼痛過敏抑制効果を検討した。また、神経保護作用を有するHO-1の発現についても検討した。Wistar rat 8週齢雄を使用し、末梢神経障害モデルとして、Chronic Constriction Injury(CCI)モデルを用いた。bFGF/CSを損傷神経に巻いた(FGF群)、CSのみを損傷神経に巻いた(CS群)、CCIのみを行ったコントロール群(CON群)を作成した(各群n=25)。行動学的評価として、術後1,3, 5, 7, 14日目にvon Frey testを行った(各群n=5)。また術後1, 3, 5, 7, 14日目の坐骨神経からRNAを抽出し、RT-PCRを行い、損傷神経内でのHO-1の発現を検討した。また術後1日目の坐骨神経内でのHO-1蛋白の発現をELISA法で定量した。またHO-1の免疫染色を行い、陽性細胞をカウントした。術後1-5日目に、FGF群はCS群, CON群に比し、有意に疼痛過敏が抑制された。また、術後1-5日目に、FGF群はCS群, CON群に比し、損傷神経内でのHO-1 mRNAの発現が有意に高値を示した。FGF群ではCS群、CON群に比し、HO-1蛋白の上昇とHO-1陽性細胞数の増加が認められた。bFGF/CSによる疼痛過敏抑制が示され、また損傷した坐骨神経内でHO-1の発現が上昇した。bFGF/CSはHO-1の誘導を介して痛覚過敏を抑制している可能性が考えられた。
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