研究実績の概要 |
前年度に引き続き、椎間板変性に至る分子メカニズムを解析するため、腰椎変性疾患で脊椎固定術をおこなったヒトの椎間板組織を用いて、遺伝子解析をおこなった。前年度にSDラットを用いて解析したデーターを参考にして、CCN familyの発現をラットと同様にヒトサンプルでも解析した。また痛みの程度や画像評価との相関関係を解析するため炎症性サイトカイン(IL-6, IL-1β,TNF-α)やケモカインであるCCL20とその受容体であるCCR6の発現を解析した。16名の腰椎変性疾患から採取できた椎間板組織をReal-time PCRにかけ解析すると、SDラットのデータと同様にCCN2(CTGF)の発現が他のCCN familyと比較し高いことがわかった。さらに腰痛や下肢痛を有す腰椎変性疾患中の椎間板組織には、炎症性サイトカインのうちTNF-αよりもIL-6の発現が高く、変性椎間板組織内にCCR6の発現が炎症性サイトカインと同程度発現していることが確認された。 一方でCCR6のリガンドであるCCL20は変性椎間板中に発現を確認したが、その発現量は炎症性サイトカイン(IL-6, IL-1β,TNF-α)よりも低かった。この結果については本年度の研究結果からだけでは評価が難しいが、すでに椎間板の変性がある程度進行してしまった椎間板組織中には、すでにTh17細胞を椎間板組織に動員する役割がすんでおり、その発現が低値となっている可能性が示唆された。今後、変性椎間板中のTh17関連分子の発現強度をELISA、Real-time PCR、FACS等で解析する必要があると考えている。
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