研究実績の概要 |
ラット椎間板髄核細胞を1%の低酸素濃度条件で培養し、IL-17Aを投与して評価した。次に、in Silico解析で得られた新規IL-17A活性阻害候補化合物であるSTK630921(以下STK)の作用の評価を行った。 50ng/ml のIL-17Aを24時間投与すると、COX-2、IL-6に加えSTAT-3, MMP-3,MMP-13のmRNAの有意な増加が認められた(n=4,p<0.05)。また、STK50μg/mlとIL-17A50ng/mlの投与24時間後にこれらのmRNAの発現は、IL-17A単独投与群と比較して有意に抑制された(n=4,p<0.05)。さらに、MAPK経路の主要な因子であるp38, ERK, JNKの活性阻害剤であるSB203580,PD98059, SP600125をそれぞれ10μMとIL-17A50ng/mlを髄核細胞に投与した24時間後、COX-2のmRNA発現は全ての活性阻害剤投与条件下でIL-17単独投与群と比較して有意に減少し、IL-6はSB203580,PD98059の投与下で有意な減少を呈した(n=3,p<0.05) 。STK50μg/mlとIL-17A50ng/mlを投与30分後にp38のリン酸化がIL-17A単独投与群と比較して有意に抑制された(n=3, p<0.05)。 今回の結果から、IL-17Aは椎間板の変性進行に関与する因子の制御に関与している可能性が示唆され、IL-17A活性の制御は変性椎間板の有効な治療標的になり得ると考えられた。低分子化合物STKはIL-17A活性阻害剤の候補化合物として有望であると考えられた。さらに、MAPK経路はIL-17AによるCOX-2発現を介在する経路の一つであると考えられ、STKはp38の制御に作用することによりCOX-2やIL-6の発現に関与している可能性が示唆された。
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