研究課題/領域番号 |
17K10947
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
上井 浩 日本大学, 医学部, 助教 (50451373)
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研究分担者 |
徳橋 泰明 日本大学, 医学部, 教授 (80188739)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 椎間板変性 / DFAT / 腰痛 / 喫煙 |
研究実績の概要 |
研究の目的 腰痛を惹起する原因の1つである椎間板変性の治療は根治的なものはなく、未だに疼痛に対する対症療法が中心である。これまで当教室において喫煙による椎間板変性についてのメカニズムの詳細について明らかにしてきたが、治療法の確立にまでは至っていない。成熟脂肪細胞に由来する脱分化脂肪細胞(Dedifferentiated fat cell: DFAT)が治療に有用である可能性があり、新たな治療法開発あるいは予防法を確立することが目的である。 計画している具体的な研究項目はラットに受動喫煙を行わせた後にDFATを静脈内投与し、①椎間板と肺組織の組織学的解析、サイトカイン発現解析およびX線学的評価を行い、②臨床応用に向けた至適な投与量を検証することである。 1)受動喫煙ラット椎間板変性モデルの作製。受動喫煙によるラット椎間板変性モデルは既報に従って作製した。タバコは両切りショートピース(JT, Inc., Tokyo, Japan)を使用した。SDラットを上記の自動受動喫煙装置内で8週間飼育し椎間板変性を誘導した。 18頭のSDラットをランダムに、DFAT群、PBS群、Control群の3群に群分けした(各群n=6)。DFAT群は8週間の喫煙下で0週、2週、4週、6週の時点で0.5ml リン酸化緩衝液(Phosphate buffered saline: PBS)にラットDFAT (1×106個)を溶解し、尾静脈から静脈内投与した。 2)DFAT移植。DFAT移植細胞数は、Maruyamaらの既報に従い、静脈内投与しても肺塞栓などの副次作用を起こさず、全身性の免疫制御作用が期待できる細胞数として1×106個/頭を採用した。PBS群は、8週間の喫煙下で0週、2週、4週、6週の時点でPBS 0.5mlを尾静脈より投与した。Control群は非喫煙下、非投与でDFAT群、PBS群と同様に8週間飼育した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自動喫煙装置の不具合が判明した。タバコの着火が十分に起こらず、受動喫煙のタバコの本数が1日20本に満たない状態であった。機械のメンテナンスの時間を要したため、実験の開始がやや遅延した。自動喫煙装置は5分間の喫煙送風と5分間の室内換気を行い、1時間のインターバルをおき、1日に20回繰り返し施行するよう設定した。18頭のSDラットをランダムに、DFAT群、PBS群、Control群の3群に群分けをする(各群n=6)。DFAT群は8週間の喫煙後に0週、2週、4週、6週の時点で0.5ml リン酸化緩衝液(Phosphate buffered saline: PBS)にラットDFAT (1×106個)を溶解し、尾静脈から静脈内投与する。DFAT移植細胞数は、既報に従い、静脈内投与しても肺塞栓などの副次作用を起こさず、全身性の免疫制御作用が期待できる細胞数として1×106個/頭とする。PBS群は、8週間の喫煙後に0週、2週、4週、6週の時点でPBS 0.5mlを尾静脈より投与する。Control群は非喫煙後、非投与でDFAT群、PBS群と同様に8週間飼育する。
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今後の研究の推進方策 |
ラットは喫煙開始前、8週間の喫煙後の0週、4週、8週にX線撮影を施行し、椎間板高を評価する。実験終了時にペントバルビタールナトリウムの腹腔内過剰投与にて深麻酔下に安楽死を施行する。直ちに背部の脊椎直上より縦切開を加えて脊椎を露出し、尾椎を除く胸椎と腰椎を、胸骨正中切開後に肺を摘出して組織学的評価、免疫組織学的評価、遺伝子発現変化、X線学的評価を行う。各群6頭の腰椎椎間板より2椎間の椎間板、および肺組織からそれぞれtotal RNAを抽出する。抽出したRNAをDNaseⅠ処理を行いcDNAを合成する。それらのcDNAを各群濃度を10ng/μl調整し目的遺伝子のPCR行う。椎間板と肺のmRNA発現変化は、TaqMan gene expression assays(Applied Bionsystems, Foster City, CA)を用いたリアルタイムRT-PCR法にて解析する。定量方法は絶対的定量法を用い、各遺伝子について発現量の高いcDNAを標準サンプルとして用い、5倍の系列希釈で検量線を作製する。各遺伝子の発現定量値をGAPDHおよび18S rRNA発現定量値で除した値を補正値とする。この補正値を用いてSox9、aggrecan、versican、HGF (Hepatocyte growth factor)、PGE2 (Prostaglandin E2)、TSG-6 (Tumor necrosis factor- stimulated gene-6)、TGFβ1(Transforming growth factor-β1)、IL1-β、IL-6およびIL12-βを各群の群間比較を行う。
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