研究課題/領域番号 |
17K10949
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
武内 恒成 愛知医科大学, 医学部, 教授 (90206946)
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研究分担者 |
玉田 靖 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (70370666)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 再生医療 / コンドロイチン硫酸 / 脊髄損傷 / 神経再生 / バイオマテリアル |
研究実績の概要 |
脊髄損傷および中枢神経損傷後、神経再生に向けた治療方向性を検討している。そのなかでも神経再生に最大の阻害作用を持つコンドロイチン硫酸(CS)の発現を、新しい遺伝子治療とバイオマテリアルを用いて抑制することにより再生環境を整えるという、応用に向けた研究を推進してきた。また中枢神経再生治療において、iPS細胞などを神経組織移植部に保持し、再生環境を整えるためのシステム構築をマウス・ラットモデルにて遂行している。 そのためにも、CSがいかに生体組織の炎症系の制御を行っているかという大きな課題を明確化することともに、上記治療応用を推進している。 1)CS発現と上皮および組織構築と炎症性解析: CS発現を抑えることで、生体内の炎症性全般に関わることが明らかとなった。とくに、細胞外マトリックスに対して、なかでもコラーゲンの配向だけではなく構築に機能していることを高調波2波長レーザー顕微鏡解析などから明らかにした。さらにコラーゲンの発現そのものにもCSが必要であることを報告した(Sci.Rep2018)。組織発生及び再生にCSが重要であることを示した 2)CS合成阻害薬物のDDS効果と生体内炎症性解析: フィブロインスポンジを徐放剤として用いたsiRNA投与で、炎症領域特異的に蛍光標識核酸医薬がデリバリーされることも確認し、炎症におけるCS制御機構とともに遺伝子レベルでの網羅解析を行った。炎症鎮火におけるCS発現量の調整とともに、核酸医薬でのDDSの優位性とともに、炎症制御における薬剤としての可能性を示すことが出来た。 3) iPS細胞および多くの幹細胞(間葉系幹細胞・ES細胞)移植とともに、周囲の細胞外環境をCS制御の観点から解析を開始した。幹細胞の定着活性やそこでの分化活性を定量化し、CSの発現量による分化能変化が少ないことと、バイオマテリアルによる影響も検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
CSの発現による細胞外環境操作を薬剤によって行う可能性を明確にしたこと、薬剤のDDSによる、炎症部特異的な再生誘導が可能であることを見出したことは、今後の研究においても大きな進展である。メカニズム解明を進めるとともに、今後動物実験での例数を増やすことで、炎症制御能と神経再生による生理機能回復を前倒しで検討できるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
研究成果に則り、脊髄損傷治療においては、マウスの生理機能解析を進めている。さらに、脊髄損傷後の損傷部へのiPS細胞および幹細胞移植による、評価をさらに前倒しで進める。 その際に、移植領域の細胞外マトリックスの発現などの解析を、CSだけではなくコラーゲンなど網羅的に解析することを可能とした。また、中枢損傷後の慢性期患者を想定し、脊髄損傷後、一定期間経過後の経過したマウスを用い、薬剤投与および細胞移植による生理的回復がどの時点まで可能かという、治療におけるタイムウインドウの検証を開始した。
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