研究課題
加齢に伴い生じる脊椎・椎間板変性は腰痛や脊柱管狭窄、脊柱変形など脊椎疾患の主な原因と考えられている。しかし、脊椎・椎間板の変性過程でどのような因子が関与するのか未解明な部分が多い。そこで髄核に発現するSonic hedgehog(Shh)と椎体終板に発現するIndian hedgehog (Ihh)の双方のHedgehogシグナル伝達に関与する膜蛋白のSmoothened (Smo)を生後に欠失させるマウス、Smo-cKO( Rosa Cre-ER(T);Smof/f))を作成し、両側の椎間関節を切除した椎間板変性促進モデルにて検討した。結果:wild typeでの手術群(control群)では、術後9週で明らかな椎間板変性と骨棘形成が見られたのに対し、Smo-cKO群では、椎間板変性と骨棘形成が有意に抑制されていた。ついで変性のメカニズムにHedgehogがどのように関わっているのか組織切片を作成し免疫染色等で検討したところ、control群の変性した椎間板には終板軟骨細胞の肥大化とVEGFならびにCD31の発現がみられたが、Smo-cKO群では軟骨細胞の肥大化が有意に抑制され、またVEGFならびにCD31の発現が抑制されていた。さらに、wild typeのマウスへの椎間関節切除手術後にSmoの阻害薬であるSonidegib (Erismodegib, NVP-LDE225)を週3回腹腔内注射し、椎間板変性の抑制が起こるか否か確認したところ、生理的食塩水投与群と比較して阻害薬投与群では変性による椎間板高の低下が有意に抑制され、組織学的にも椎間板変性は抑制されていた。これらの結果から、椎間関節切除による椎間不安定性により惹起される椎間板変性には、Hedgehogが関与しており、Hedgehogは椎体終板軟骨の肥大化を促進し、無血管野である椎間板内に血管侵入を誘導すること、また隅角部には骨棘を形成することがわかった。さらに、その阻害薬であるSonidegibの腹腔内投与により椎間板変性が抑制されることがわかった。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Journal of Orthopaedic Research
巻: 38(3) ページ: 609-619
10.1002/jor.24494.