研究課題/領域番号 |
17K10961
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
安田 剛敏 富山大学, 附属病院, 講師 (20377302)
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研究分担者 |
金森 昌彦 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (20204547)
鈴木 賀代 富山大学, 附属病院, 診療助手 (20456388)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 骨軟部腫瘍 / オートファジー / 転移 |
研究実績の概要 |
プログラム細胞死 (Programmed cell death, PCD)の一つの形態であるオートファジーと肉腫細胞の増殖および転移形成の関連性を把握し、オートファジー調節による新たな肉腫治療薬の臨床応用に向けた基盤研究を行う。研究期間内には以下のことを明らかにする。腫瘍細胞としては、転移能の異なる骨肉腫ことである。 転移能の異なるマウス骨肉腫細胞 (Dunn)とマウス軟部肉腫細胞 (RCT)の2種類を用いて実験を行った。Dunnから同一クローンで低肺転移株 (Dunn)と高肺転移株 (LM8)に、RCTから同様に低肺転移株 [RCT(-)]を高肺転移株 [RCT(-)]を分離樹立した。その後、それぞれの細胞の増殖能をMTT assayを施行し、DunnおよびRCTともに低肺転移株は高肺転移株と比較し110-120%の増殖能を示しており、転移形成過程には局所の増殖能のみでは規定されないことが明らかになった。 scratch assayでは、高肺転移株で低肺転移株と比較し120-140%の運動能を有していたことを明らかにした。さらにマトリゲルへのattachment assayおよびmigration assayにて、高肺転移株で低肺転移株と比較し120-140%の細胞外マトリックスへの接着能および浸潤能を示した。これらによって、高肺転移株で低肺転移株でのin vitroでの転移形成過程の差が明らかとなった。 さらに、増殖と転移に関与する遺伝子異常を同定するため、miRNA arrayを用い、RCTの遺伝子発現を検討した。RCTに関しては、ケラチン遺伝子であるK8-19を含む9種類の遺伝子の差異を確認し、オートファジーとの関連に関してのデータ解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
RCTおよびDunnの高肺転移株と低肺転移株でのin vitroおよびin vivoでの病態生理の把握に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
DunnでのmiRNA arrayを用い、増殖と転移に関与する遺伝子異常を同定する。ついで、in vitroで各肉腫細胞を蛍光色素Monodansylcadaverine (MDC)でオートファジーを発現と割合の検討を行う。すでに、転移能の異なる細胞株は樹立し信用のおけるものとなったため、十分に可能である。さらに、in vitroの結果を踏まえた上で、in vivoでの原発巣、転移巣でのオートファジーの発現の程度と時期に関して検討を深める。 miRNA arrayを用いた発現解析の結果から、オートファジーの調節候補遺伝子またはサイトカインを反応させ、各肉腫細胞の形態変化・機能評価を行う。細胞増殖も含め転移能の評価も行う (前述のごとくすでに対照群の結果はある)。特に形態変化として、オートファジーのマーカーであるMicrotubule-associated protein light chain 3 (LC3)での免疫組織染色で行う。 細胞内シグナル伝達によるオートファジーの調節機能の解明のため、オートファジーを調節する細胞内シグナル伝達をRT-PCRで行う。オートファジーのシグナル伝達として、はAKT/mTOR、SrcやMAPKの経路についても検討を行う。オートファジーの調節する候補遺伝子 (p62など)または増殖因子を反応させた状態での変化の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
RCT細胞、Dunn細胞の病態生理の把握に時間を要し、計画よりやや遅れたため残額が生じた。 研究費の使用内訳は、①免疫組織化学染色、PCR、フローサイトメトリーに必要な試薬の購入、②研究成果の発表に必要な経費である。③また、RCTの異なる肺転移能の維持のため、C3H/Heマウスを購入、飼育を継続にも使用する予定である。
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