研究課題/領域番号 |
17K10965
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
名井 陽 大阪大学, 医学部附属病院, 准教授 (10263261)
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研究分担者 |
岡本 美奈 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (50457008)
吉川 秀樹 大阪大学, 医学系研究科, 理事・副学長 (60191558)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ウロコ由来Ⅰ型コラーゲン / コラーゲンスポンジ / 骨軟骨欠損 / 軟骨再生 |
研究実績の概要 |
本年度のin-vitro実験系ではウロコ由来Ⅰ型コラーゲンスポンジ(以下、ウロコスポンジ)に対する軟骨細胞の細胞親和性、接着能、軟骨組織形成能、ヒト滑膜由来間葉系幹細胞(以下、hMSC)の細胞接着能を確認した。実験方法はウサギ関節軟骨より軟骨細胞を採取、培養増殖させウロコスポンジに播種し、軟骨分化培地で2週間培養の後、組織評価(H-E染色、サフラニンO染色)を行った。良好な細胞接着性と軟骨組織の特徴であるサフラニンOに濃染する細胞外マトリックスの形成、成熟した硝子軟骨の特徴であるラクナ構造の形成を認め、軟骨再生に応用可能な素材であると考えられた。また、hMSCのウロコスポンジへの細胞接着性も確認した。 既存のウシもしくはブタ由来のⅠ型コラーゲンスポンジは培養液で湿潤状態となると強度が著しく低下し破損し易くなるため慎重な操作を要するが、対してウロコスポンジは湿潤状況においても強度に優れ、細胞をまんべんなく播種するために細胞懸濁液内で数十回セッシで圧縮してもウロコスポンジの破損は認めなかった。細胞播種した翌日の組織評価でもスポンジの内部構造が保持、細胞が一様に播種されていることも確認した。力学強度に優れ扱い易いことは今後臨床応用を想定した場合に汎用性が高く大きなメリットと考えられる。 動物実験では、ウサギの膝関節にφ4mm、深さ2mmの円柱状の骨軟骨欠損を作成し、欠損と同じ形状、サイズのウロコスポンジを細胞播種を行わず移植し、移植後1か月、2か月で組織評価を行った。1か月評価で軟骨層、軟骨下骨層のどちらにおいても移植組織と母床の良好な癒合を認めた。軟骨下骨層の骨梁再生がみられ、軟骨層もサフラニンOで染色される再生組織を認めた。しかし2か月評価では軟骨層の再生組織のサフラニンO染色性、軟骨下骨の再生が不十分であった。滑膜炎や移植部へのマクロファージの集簇等の有害事象は認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ウサギ骨軟骨欠損モデルで細胞播種を行わずにウロコスポンジを移植した実験系において、1か月評価では比較的良好な結果であったが、2か月評価では再生が不十分であったためか再生組織の変性を認めたため、異物反応や炎症の影響を優先して行うこととしたため、H29年度に予定していた線維膜/多孔体ウロココラーゲンスポンジの作成は次年度に繰り越した。
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今後の研究の推進方策 |
細胞担持を行わないウロコスポンジ単体の移植では骨軟骨欠損の再生に不十分であることが明確となったため、ウサギ骨軟骨欠損モデルで細胞担持させたウロコスポンジ移植の効果検証を行う。間葉系幹細胞もしくは軟骨細胞を担持させて移植評価を行う。 また、骨軟骨欠損モデルにおいて軟骨層の良好な再生には土台となる欠損部深層の軟骨下骨の力学強度が必須であるため、表層をウロココラーゲン、深層を人工骨で形成するハイブリッド型の人工組織作成を並行して検討する。当初計画通り、移植部の局所環境の改善のため表面を膜状のウロココラーゲンで覆った人工組織の開発および評価も行って構造最適化の達成後、大動物モデルでの移植試験、及び非臨床生物学的安全性試験、臨床応用に向けた検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ウロココラーゲンスポンジのin vivo評価で予想外の結果を得て分析に時間を要したため、平成29年度当初計画である移植部の局所環境の改善のため表面を膜状のウロココラーゲンで覆った人工組織の開発を次年度に実施する。 次年度はこれに加え、計画通りウサギ骨軟骨欠損モデルで細胞担持させたウロコスポンジ移植の効果検証を行う。間葉系幹細胞もしくは軟骨細胞を担持させて移植評価を行う。 また、骨軟骨欠損モデルにおいて軟骨層の良好な再生には土台となる欠損部深層の軟骨下骨の力学強度が必須であるため、軟骨全層欠損モデルにおいて軟骨下骨の再生の改善がポイントと考えている。軟骨表層をウロココラーゲン、深層を人工骨で形成するハイブリッド型の人工組織作成についても並行して検討する。
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