研究課題
外傷や骨感染症、骨腫瘍により骨を失った患者に対して骨延長術は有用で確立された治療法であるが、長い治療期間を必要とすることが欠点である。本研究では、骨延長術に炭酸ガス経皮吸収療法を組み合わせることで、骨形成が促進され治療期間が短縮されるかを検証した。ラビットの脛骨に創外固定器を装着、骨幹部で骨切りを行い、1週間の待機期間を置いた後、1日1mm、計10mmの骨延長を行った。患側下肢に炭酸ガス経皮吸収促進効果を有するハイドロジェルを塗布し炭酸ガスを経皮吸収させた。経皮吸収を行った炭酸ガス群と行わなかった対照群で、骨形成をX線学的、組織学的に、骨強度を力学試験にて評価し比較検討を行った。また、骨延長部における血管新生の組織学的評価、遺伝子発現についても比較検討を行った。炭酸ガス群では対照群に比べ、血管新生、軟骨内骨化が増加、加速しており、その結果、骨延長術による骨形成が促進されていることが分かった。炭酸ガス経皮吸収は、骨延長術における骨形成を促進する有用な併用療法として臨床応用が期待できる可能性を示せた。実臨床で骨折治癒促進目的に使用できる治療法は限定される。その中で超音波骨折治療は数少ない、有効性にevidenceのある骨折治癒促進療法である。既存の超音波骨折治療に炭酸ガス経皮吸収を加えることで、骨折治癒促進に相加効果、相乗効果が得られるという仮説を立て、ラット大腿骨骨折モデルを用いた動物実験を実施した。骨折後に処置を加えない群、超音波骨折治療のみ行う群、炭酸ガス経皮吸収のみ行う群、両方の治療を行う群という4つの実験群を作成した。これらにおいて骨折治癒過程をX線学的、組織学的に評価し、骨折部新生組織における遺伝子発現、さらに骨強度を評価して4群での比較検討を行うこととした。本実験では未だ全ての評価が終了しておらず仮説の検証までには至っていないため、今後も実験を継続していく。
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Clinical Orthopaedics and Related Research
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