研究実績の概要 |
昨年までの研究において、SCL14A1と発現が連動するPEG10が、軟骨肉腫細胞株における細胞増殖や細胞運動に関与することが明らかとなったため、軟骨肉腫におけるPEG10の機能解析のための実験を追加で行った。 臨床サンプルにおいて、免疫染色と、mRNA発現解析(RT-PCR)を行い、悪性度との関連を検討した。臨床サンプルは良性である内軟骨腫7例、悪性である軟骨肉腫gradeⅠ11例、軟骨肉腫gradeⅡ7例の計25例を用いた。免疫染色、RT-PCRいずれにおいても、軟骨肉腫においては内軟骨腫と比較すると、悪性度が上がるとともにPEG10の発現が減少することが確認された。また軟骨細胞株SW1353において、TGF-β刺激でPEG10の発現が減弱することが確認され、臨床検体、in vitroいずれにおいても、PEG10の発現は悪性度と逆相関を示し、さらにTGF-β/BMP活性とも逆相関していることが確認された。また、細胞増殖については、TGF-βと逆の促進効果、細胞運動と浸潤については、TGF-βと逆の抑制効果を認めた。これらのメカニズムを明らかにするため、正常軟骨細胞株や軟骨肉腫細胞株を用いてレポーターアッセイを行った。運動能や浸潤能に関してはAKT経路の活性化を確認するためp38MAPKおよびAKT経路について解析を行い、浸潤能に関してはAKTのさらに下流であるMMP-1,-3,-13の発現の解析を行った。 これまでの研究により、軟骨肉腫においてSLC14A1やPEG10の発現がその悪性度に関与することが明らかとなり、軟骨系腫瘍の鑑別因子としての可能性が示唆され、またこれらの発現を阻害することで軟骨肉腫における悪性度を低減させる分子治療標的となるうる可能性が示唆された。
|