研究課題/領域番号 |
17K10977
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
星 学 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (50445037)
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研究分担者 |
大戎 直人 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (50754743)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 単純性骨嚢腫 / 再発 / 長管骨 / 踵骨 |
研究実績の概要 |
単純性骨嚢腫は漿液性の液体で満たされた空洞が骨髄内で形成される特に小児期に発生する腫瘍様類似疾患である。比較的発生頻度が高く、罹患した骨が菲薄化し脆弱性をきたし、痛みや、病的骨折による機能障害をきたすことが知られている。また、手術後の再発率が高いことも問題点となる。これらの問題点を解決するためには、本疾患の発生,再発のメカニズムの解明が必要不可欠である。過去にもいくつかの単純性骨嚢腫の発生メカニズムに関する研究が行われてきているが、未だに尚、その原因については未解明のままである。本研究では単純性骨嚢腫を臨床的な病態の違いから、1.長管骨単純性骨嚢腫 2.再発した長管骨単純性骨嚢腫 3.踵骨骨嚢腫に分類し、それぞれの病変から回収した手術試料を検討することで、発生、再発因子の解明を試みる予定としている。単純性骨嚢腫の壁細胞はどちらの骨芽細胞系または破骨細胞系のどちらの形質が優位であるのかを証明するために、壁細胞からRNAを回収することによりその遺伝子発現を解析した。長管骨単純性骨嚢腫の壁細胞から嚢胞壁細胞の細胞培養したところ紡錘形細胞の増殖が確認された。また、長管骨単純性骨嚢腫の壁細胞からRNAを回収し、cDNAとし、骨芽細胞系の分化に関する遺伝子発現および(RUNX2 オステオポンチン,骨シアロプロテイン,オステオカルシン)また破骨細胞系の分化に関する遺伝子発現(CAII,TRAP, RANK)の検討を行ったところ、破骨細胞系統の遺伝子発現は確認できなかったが、オステオポンチン、骨シアロプロテイン、オステオカルシンの骨芽細胞系統の発現が確認され、単純性骨嚢腫の壁細胞ではRNAレベルでは破骨細胞系統ではなく骨芽細胞系統にその発現が傾いていることが確認された。また、分化のレベルは初期の骨芽細胞レベルと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度 病理組織像の検討(HE染色、免疫染色法)に関して、1.長管骨単純性骨嚢腫 2.再発した長管骨単純性骨嚢腫 3.踵骨骨嚢腫で染色を行った。単純性骨嚢腫ではその骨に空洞ができる病態の特徴から、特に破骨細胞活性に注目し、TRAP染色を行った。しかしながら、長管骨単純性骨嚢腫および再発した長管骨骨嚢腫の間において強視野(×400倍)にてTRAP染色による破骨細胞活性には有意差を認めなかった。更に、長管骨単純性骨嚢腫と踵骨単純性骨嚢腫の間においてもTRAP染色による破骨細胞活性の有意差を認めなかった。組織学的な特徴として、特に踵骨単純性骨嚢腫の特徴として慢性出血像をしめすCholesterol granulomaの存在が認められた。 従来の予測では踵骨の単純性骨嚢腫での破骨細胞の活性が低く、長管骨単純性骨嚢腫での破骨細胞の活性が高く、更に再発した長管骨単純性骨嚢腫の破骨細胞活性が更に高いことを推測していたが、いずれの組織においてもTRAP染色陽性となる破骨細胞数が非常に少なく、統計学には有意差は確認できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
単純性骨嚢腫の内溶液を用いてのプロテオーム解析に関しては単純性骨嚢腫の発生・再発の関連タンパクの同定するために現在サンプル試料調整中である。明らかに臨床病理の異なる、長管骨単純性骨嚢腫と踵骨骨嚢腫の内容液の標本を用いて解析を試みている段階である。 単純性骨嚢腫の内溶液のプロテーム解析に関して、現在、長管骨単純性骨嚢腫、踵骨単純性骨嚢腫のサンプル試料の調整を行っている。1例毎の解析をおこなうより、その臨床的特徴をつかむために3例づつ、混合して解析する方向性ですすめている。現在サンプルを調整中の段階である。
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次年度使用額が生じた理由 |
プロテオーム解析についてはまだ試料調整中の段階であり、まだ予定通りに進行していない。来年度には引き続き単純性骨嚢腫の症例の集積とプロテーム解析を主体として研究を行う予定である。
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