プロテオーム解析による単純性骨嚢腫の発生・再発の関連タンパクを同定することが本研究の目的である。長管骨単純性骨嚢腫症例と踵骨骨骨嚢腫症例の臨床的な相違点から、内容液についても相違があると想定した。過去にはこの内容液の違いを検討した報告はない。当院での手術加療時に回収した単純性骨嚢腫症例の内容液を用いて、プロテオミクスによるタンパク質の網羅的解析を行った。 進捗状況:単純性骨嚢腫内容液における蛋白・ペプチドの発現パターンの網羅的な比較解析のために,iTRAQlabeling法およびQSTAR Elite LC-MS/MS(AB Sciex)法によるプロテオーム解析を施行した。解析結果として、長管骨骨嚢腫症例の内容液でlumican,periostin(osteoblast specific factor)などの発現上昇が認められた。踵骨骨嚢腫症例の内容液ではafamin やapolipoprotein E(ApoE)などの発現上昇が認められた。Ingenuity Pathway Analysisを用いて、高発現しているpathwayの解析を行ったところ、踵骨骨嚢腫症例の内容液では、脂質代謝関連経路の活性化が認められた。 本プロテオーム解析を施行した以外の踵骨骨嚢腫症例の内容液を用いてapolipoprotein E を生化学的に測定したところ、その内容液で有意に apolipoprotein Eが高値であることを確認された。apolipoproteinはコレステロール代謝にかかわる物質である。このため、内溶液中のコレステロールに関して,長管骨骨嚢腫症例と踵骨骨嚢腫症例で比較検討したところ、踵骨骨嚢腫症例で有意に高値であることが判明した。この結果から踵骨骨嚢腫症例では、特に、脂質代謝関連の経路の活性化がみられることが確認された。
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