研究課題/領域番号 |
17K10980
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
藤間 保晶 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (60448777)
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研究分担者 |
朴木 寛弥 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40336863)
田中 康仁 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30316070)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Reg遺伝子 / 再生遺伝子 / 骨膜 / 骨切り術 / 骨癒合 / 骨形成 |
研究実績の概要 |
骨組織に対する再生遺伝子Reg発現について、これまでの研究から、Reg遺伝子は組織損傷後、炎症急性期に発現するという仮説のもと、in vivo検証モデルとしてラット大腿骨骨折モデルを作成して研究した。その結果、Reg mRNA遺伝子は骨折修復プロセスで発現し、その局在は骨膜に顕著に存在することが見出された。Reg遺伝子発現は修復過程で発言し、修復が完了すると消失した。本メカニズムの作用点を骨膜由来間葉系細胞を用いて、細胞増殖、細胞分化の観点からin vitroに分子生物学的に検討した。その結果、修復に関係する細胞の増殖にはapoptosisの抑制に作用するBim遺伝子との関連が見出された。 一方、新型コロナウイルス感染症の蔓延化、基礎研究および学外交流が抑制されたことから、本研究を自施設で施行する手術、臨床技術の開発に結び付けた。現在、高齢化社会が深刻化する一方、高齢者の日常生活レベルの維持、社会・経済活動への参加など健康年齢の重要性が指摘され、臨床医でもある我々は高齢者の活動度に大きく影響を与える慢性疾患・変形性膝関節症の治療に着目した。現在主として行われる人工膝関節手術は高齢者の勤労やスポーツ活動の復帰には厳しい治療法であり、我々は活動性の維持および関節機能を温存する骨切り手術を開発している。その骨切り手術は文字通り「骨折」の治療の応用であり、前述の骨組織の修復過程の基礎研究に直結し、早期骨癒合が術後成績に大きく関与する。現在、我々が過去に研究してきた培養細胞搭載技術(人工足関節、殺細胞処理骨での科研報告あり)、人工骨を用いた基礎研究の結果を踏まえた手術治療における工夫を種々施行し、検証している。本研究は現在、臨床の医療への礎にもなり、医療費の削減にも寄与する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Reg遺伝子の発現およびメカニズムについて、昨年は成果を日本再生医療学会で報告した。また、基礎医学と臨床医学の融合を目指すべく、障害骨モデルとして運動器、骨修復・骨再生、人工骨の効率的使用が求められる関節温存骨切り術をターゲットを置き、社会に還元する検討を進めた。現在、これまでの研究について論文化し、その研究結果を基にした臨床成績に反映する手術治療について学会での講演を中心に行っている。現在、関節温存骨切り術を施行した患者の臨床経過から本手術の利点、欠点を見出し、欠点を補うべく、研究会事務局を創設し、全国の臨床医と情報交換を行っている。令和2年4月以降、現在に至るまで新型コロナウイルス感染症の影響により、基礎研究および情報交換等が制限されている状況ではあるが、webシステムの応用、令和3年度には複数の書籍での啓蒙論文の掲載やweb講演が行えたことを鑑みると、おおむね順調に進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
高齢化社会が深刻化するなか、健康年齢の重要性が指摘されている。健康の維持は高齢者の寝たきり予防、社会活動性および労働活動にも寄与する。臨床医でもある我々は高齢者の日常生活活動度に大きく影響を与える変形性膝関節症の治療に着目した。現在広く行われている人工膝関節手術は高い活動性を維持するには困難であり、勤労やスポーツ活動には不向きな治療法であり、我々は世界に先駆けて高い活動性の維持および関節機能を温存する効率の良い関節温存骨切り手術の手術方法を研究・開発している。本手術は骨切りにより下肢アライメントを矯正する手術であり、手技の本質は「骨折」と共通であることから、本研究テーマである骨再生促進術に直結する。今後、本研究のテーマである「障害骨の骨修復・再生の研究」および、これまで我々が研究・報告をしてきた「幹細胞制御技術の研究」「人工骨における骨形成」を臨床医療に活かし、新たな手術方法の開発をしていく。現在、新型コロナ感染症が蔓延し、研究活動が制限されるなか、我々の施設に事務局を立ち上げ、関節温存手術を実施している全国の手術執刀者と各種骨切り手術の術式の利点および欠点を検証するネットワークを構築し、臨床成績をデータを集積し手技の開発を行っている。 本年も新型コロナウイルス感染症が蔓延する状況下、自施設での臨床研究とネットワークを駆使したデータ解析に中心を置き、本研究結果を礎に患者に安全な、安定した治療成績が獲得できる手術術式の開発を目指す。それにより、医療費の削減や国家財政にも貢献すると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症蔓延下、研究機関や研究協力機関への往来の制限、学会発表の制限があった為
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