研究課題/領域番号 |
17K10981
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
面川 庄平 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (70597103)
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研究分担者 |
田中 康仁 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30316070)
赤羽 学 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (40326327)
河村 健二 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20445076)
清水 隆昌 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (70464667)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 細胞シート / 細胞外マトリックスシート / 液体窒素 / 偽関節 / 成長因子 |
研究実績の概要 |
骨髄由来間葉系幹細胞(MSCs)を骨分化誘導し作製した骨形成細胞シートを液体窒素処理により殺細胞化した細胞外マトリックス(ECM)シートを作成した。ECM シートを用いて難治性偽関節の治療が可能か否かを検証することが本研究の目的であるが、第一段階として以下の検索を行った。 1)ECMシートの細胞の生存率の評価、 2)ECMシートに含有されるⅠ型コラーゲンの免疫染色検査、3)ECMシートを人工骨に巻きラット皮下に移植、4週後の人工骨の組織評価とreal time PCR法によるオステオカルシンとアルカリフォスファターゼの評価 結果1) ECMシートの生細胞数の生存率は0.2%であり、細胞を有効に死滅可能であったことがわかるが、同時に骨形成能を全く備えていない可能性が高い。2) ECMシートのⅠ型コラーゲンの線維構造は破壊されることなく染色され、移植をする際に十分な強度を保持することがわかった。3) V. Goldner染色で組織評価を行った。ECMシートを移植しない人工骨単体と比較して、ECMシート移植した人工骨は明らかに未分化骨や石灰化骨が人工骨内に多く生成していたが、Real time PCR法ではオステオカルシンとアルカリフォスファターゼは同程度であった。ECMシートによって皮下の間葉系幹細胞に骨誘導できることが予想されるが、骨組織の十分な生成には至らないことが予想された。以上研究概要について言及した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液体窒素処理することで99.8%の細胞を死滅させることができた。これにより、細胞成分による骨形成効果を除外可能である。同種移植や異種移植においても抗原性が極めて低い状態で移植が可能と考える。 ラット大腿骨骨髄より培養精製した細胞シートを液体窒素で処理してもシートの形状は維持された。また、免疫組織染色を行うとⅠ型コラーゲンは線維性の構造は維持されており、物理的にシートの移植が可能であることがわかった。これは今後の実験でラット偽関節モデルの骨折部周囲にシートを巻いたり、注射器で注入する際も安定して実験が行えると考えられた。 液体窒素処理後の細胞外マトリックスシートを人工骨に巻いてラット皮下に移植する予備実験を追加した。組織検査で十分な未分化骨の発現を確認し、シート内の成長因子が皮下の間葉系幹細胞に骨誘導できたと解釈した。
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今後の研究の推進方策 |
ECMシートを人工骨に巻いてラット皮下に移植する実験においては、組織検査で骨誘導能をシートが持つことが示唆された。しかしながら、Real time PCR法でオステオカルシンやアルカリフォスファターゼは検出されず、十分な骨形成を確認できなかった。ラット皮下は骨細胞がない場所であり、臨床で重度骨折や偽関節を治療する際ある程度骨細胞のある場所への移植が予想される。したがって本研究で偽関節モデルにシートを移植する際には、骨膜や骨髄を残すモデルで実験を進めるのが適切と考えた。
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次年度使用額が生じた理由 |
約3万円の余剰金が発生したが、次年度に繰り越す予定である。
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