研究課題/領域番号 |
17K10983
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
小沼 賢治 北里大学, 医学部, 講師 (80348557)
|
研究分担者 |
内田 健太郎 北里大学, 医学部, 講師 (50547578)
齋藤 亘 北里大学, 医学部, 講師 (60439099)
助川 浩士 北里大学, 医学部, 助教 (60458809)
占部 憲 北里大学, 北里大学メディカルセンター, 教授 (90284489)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 広範囲骨軟骨欠損 / 同種骨移植 / 培養軟骨細胞移植 / 滑膜幹細胞移植 / 塩基性線維芽細胞増殖因子 |
研究実績の概要 |
【研究の目的】同種骨組織を移植した上に体外で増殖させた滑膜幹細胞や自家培養軟骨細胞を損傷部位に移植することで、大きな骨欠損を伴う骨軟骨欠損部の関節軟骨修復を目標とした治療法の確立を目指している。 【方法】あらかじめウサギ大腿骨顆部から円柱状の骨組織と滑膜を採取し、円柱状の骨組織は-30℃で保存しておき、移植前に80℃、10分間の加温滅菌処理を行った。採取した滑膜組織より酵素処理で滑膜幹細胞を採取し、血清を含む培養液で2週間培養した。ウサギ大腿骨顆部の関節軟骨部に径4.5mm、深さ10mmの骨軟骨欠損部を作製後、処理した同種骨を移植し、その上に滑膜幹細胞〔1×10(6) cells〕を移植した。移植後、2週間および4週間後の肉眼所見、micro CT像、組織学的評価(Hematoxylin-Eosin染色)、組織化学的評価(サフラニンO染色)を行い評価した。 【結果】肉眼所見では、移植部は周囲の組織と比較して凹面となっているが、2週および4週間ともに軟部組織で覆われており、同種骨の露出は見られなかった。micro CTによる移植部の評価では、移植した同種骨は4週間の時点で骨癒合が確認できた。組織学的、組織化学的評価では、移植した同種組織は4週の時点で骨癒合を認め、その上に生着した滑膜幹細胞は一部軟骨組織への分化を認めた。 【まとめ】これまでに本研究で得られた結果は、自家培養軟骨移植のみでは修復が困難であった、大きな骨欠損をともなう骨軟骨損傷の治療の発展、臨床応用に大きく貢献するものと思われる。しかし、移植後の4週の時点における肉眼的な表面の段差や軟骨細胞への分化が一部にとどまっているため、今後さらに研究を進める必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進捗状況がやや遅れている原因として、当初、ウサギ膝関節より採取した軟骨細胞を血清含有培養液で培養したが、得られる細胞数が少なく、移植に十分な量の軟骨細胞が得られなかったことが挙げられる。このため、滑膜幹細胞を使用した関節軟骨修復を試みた。滑膜組織を採取し、酵素処理により採取した滑膜幹細胞を血清含有培養液で培養したところ移植に十分な量の滑膜幹細胞を得ることができた。今後、軟骨組織採取方法や培養方法を再検討し、軟骨細胞移植による軟骨修復の実験も行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果では、移植後、長期間(8週~12週)の結果が得られていないこと、現段階では肉眼的に移植部の段差が存在すること、移植した滑膜幹細胞の軟骨細胞への分化が不十分であること、などの改善すべき点があり、さらに良好な軟骨修復を目指し、研究を遂行する必要がある。今後の計画を以下に列挙する。 ①滑膜幹細胞の細胞密度の条件検討:移植した滑膜幹細胞の数は過去の報告に基づき、1×10(6)cellsとしたが、さらに高密度の滑膜幹細胞を移植することにより、良好な軟骨組織の修復を期待できる。移植する滑膜幹細胞密度を調整し、移植する滑膜幹細胞の細胞数を1×10(6)、1×10(7)、1×10(8)cellsとする3条件を作製し、移植後の肉眼所見による骨軟骨欠損部の修復状態と組織学的、組織化学的な評価を行い、滑膜幹細胞の至適細胞密度を検討する。 ②移植後長期間経過した標本の評価:同種骨組織および適切な細胞密度の滑膜幹細胞を移植後、長期間(8週間、12週間)経過した標本の骨軟骨組織修復の評価を行い、骨軟骨組織の修復過程を評価する。肉眼所見による骨軟骨欠損部の修復状態の評価、micro CT像による移植した同種骨の骨癒合の評価、移植部の組織学的、組織化学的評価を行い、移植した同種骨上に滑膜幹細胞を移植したモデルと、移植しないモデルを作製し比較検討する。 ③現時点では、滑膜幹細胞の軟骨細胞への分化が不十分であるため、軟骨細胞への分化を促進するために、これまで共同研究者らが報告してきたコラーゲン結合性塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF-CBD)の効果を検討する。bFGF-CBDの骨組織へのアンカーリングの至適条件(時間、温度)を検討した後、同種骨にbFGF-CBDをアンカーリングした組織を、骨軟骨欠損部に移植する。滑膜幹細胞の軟骨組織への分化や増殖の効果を、組織学的、組織化学的に評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ウサギ骨軟骨欠損部を同種骨および培養軟骨細胞移植により修復できることを想定していたが、採取した軟骨組織から得られた軟骨細胞数が不十分であったため修復が困難であった。軟骨の培養方法や代替法を検討するため、この間に予定していたウサギを用いた移植実験を行わなかった。このためウサギ購入費が計画より下回り、次年度使用額が生じた。次年度に繰越された助成金はウサギ購入費として使用する予定である。
|