研究実績の概要 |
IL-18はマウス骨肉腫の転移を抑制し、IL-18投与マウスの血清中にIL-18誘導性がん転移抑制シグナルが見出された。がん転移抑制シグナルの同定には抗体アレイを用い複数のシグナル分子の存在が確認された。本研究ではCXCL9とCXCL10がIL-18により誘導されるシグナル分子の候補として考えられ、その真偽を確かめた上で、これらの作用を明らかにする。さらに、我々が提案するIL-18による宿主のがんが”転移しにくい環境作り” という新たな概念の妥当性検証と、その実行におけるIL-18の役割を証明し、その生理的意義を明らかにする。マウス骨肉腫細胞LM8及びマウス血管内皮細胞b.end3,MS1,SVEC4-10の4種類の細胞はCXCL9,CXCL10のレセプターであるCXCR3が発現していた。しかし、培養液にCXCL9,CXCL10を添加しても細胞増殖にはほとんど影響が見られなかった。また血管内皮細胞と骨肉腫細胞の接着性に及ぼす影響も見られなかった。さらにLM8細胞の引っかき実験による細胞遊走アッセイを行ったところ、CXCL9の添加では変化がみられなかったが、CXCL10の添加で遊走能抑制効果が見られた。浸潤アッセイでは血管内皮細胞と共培養した時に浸潤抑制効果が見られた。透過性実験では血管内皮細胞間からの滲出の抑制効果が見られた。さらに骨肉腫細胞と血管内皮細胞のいくつかの接着因子の発現変化がみられた。C3Hマウスの尾静脈から骨肉腫細胞を注入して肺転移を起こさせる転移モデルを用い、IL-18の転移抑制作用の下流にCXCL9,10が存在することを、抗CXCL9,10中和抗体を投与して調べた。IL-18単独投与では肺転移が抑制され、中和抗体1μg/day投与では有意差は見られなかったが、10μg/day投与では抗CXCL10抗体の共投与にわずかな転移抑制の回復がみられた。
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