股関節形成不全(DDH)は日本人に好発し、発生頻度は約0.3%である。中高年期以降に股関節形成不全を背景にした変形性股関節症(OA)を呈する患者が多く、股関節の疼痛や変形のため歩行困難となり、日常生活動作が著しく障害される。高齢者が要介護支援になる原因の第1位は関節症となっており(平成25 年国民生活基礎調査、表1)OAの予防は重要な課題である。股関節OAの有病率は1~4%との報告があり、本邦においてその原因の80%はDDHであると言われている。 本研究の目的は、日本人に最適化されたゲノムワイド関連解析ツールであるジャポニカアレイを用いて、ゲノムワイド関連解析によるDDHの原因遺伝子の解明である。具体的にはDDH症例について網羅的ゲノム解析を行い、発症に関連する疾患感受性遺伝子群を探索することである。 DDHをはじめとする運動器疾患の疾患感受性遺伝子探索のために患者血液からのDNA抽出を行っている。DDH患者200症例についてジャポニカアレイでのSNP解析(挿入欠失含む)を行った。東北大学東北メディカル・メガバンクの1070人のストックデータを健常人コントロールとして利用した。健常人データとDDH患者のデータを比較した。 ジャポニカアレイの解析の結果で、DDHに有意に出現頻度が高いSNPが157個同定された。Ubiquinol-cytochrome c reductase complex chaperone(UQCC)1遺伝子のSNPであるrs6060355のジャポニカアレイでのアレル頻度の検討ではp=5.01×10-5であった。 UQCC1遺伝子は日本人におけるDDH発症への関与が示唆された。
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