研究課題/領域番号 |
17K10996
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡田 慶太 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50759173)
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研究分担者 |
小林 寛 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20407951)
齋藤 琢 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30456107)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | HIF-1α / NFκB |
研究実績の概要 |
本年度の実験はミュータントHIF-1αベクターの作製から行った。ATDC5細胞とマウス関節軟骨細胞にミュータントHIF-1αベクターをLipofectionし、mRNA発現およびタンパク発現を確認した。続いて、これらの細胞にTNFαを1,10,50,100ng/mlの濃度で添加し、Col2a1、Aggrecan、Mmp13、Adamts5 などの発現をリアルタイムPCRで検討した。するとHIF-1 αを強制発現していない細胞では濃度依存的にMmp13の発現は上昇するのに対し、HIF-1 α強制発現細胞ではMmp13の上昇は抑制されていた。同実験を低酸素下(1%O2)で行い、同様の結果が得られた。つづいて同様の系でIκBのリン酸化を評価すると、HIF-1 αがIκBのリン酸化を抑制していることが分かった。一方、Col2a1とAggrecanの発現はHIF-1αの過剰発現で増加し、HIF-1 αの軟骨保護作用を示唆する結果が得られた。 続いてエピゲノム解析を行ったが、Lipofectionで大量のHIF-1 α過剰発現細胞を得ることが困難だったため、アデノウィルスの作製を行った。しかし、HIF-1 αの発現量に乏しかったため、現在再作成中である。そこで、低酸素下に培養した細胞を用いて、ChIPシークエンスを行った。現在、HIF-1α抗体を用いたChIPシークエンスの結果は得られているが、ヒストン修飾を見るために行ったH3K4me3, H3K27me3抗体を用いたChIPシーケンスは結果を待っている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験系の確立は順調に進んでいるが、ChIPシークエンスの結果がすべて得られていないため、当初の予定よりは遅れている。しかしHIF-1 α抗体を用いたChIPシークエンスの結果からNFκBシグナルに関連する遺伝子がいくつか候補にあがってきている。これらの遺伝子の機能解析を進めている最中である。ATACシークエンスは現在、実験の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はChIPシークエンスの結果を解析し、候補遺伝子の選別をおこなう。候補遺伝子の中で受容体や酵素など、抗体や阻害剤などを利用しターゲットにしやすい分子を絞り込み、 in vitroおよびin vivoで実験を進める。まず軟骨細胞株や関節軟骨細胞を低酸素環境で培養し、これらのsiRNA、抗体や阻害剤を用いて予備実験を行い、Catabolic factorおよびAnabolic factorの発現を検討する。軟骨保護作用のありそうな薬剤や抗体が見つかれば、次にin vitroで皮下注射やマウス膝関節に直接注射するなどして、変形性関節症モデルを用いて関節軟骨の保護的作用を検討する。また今回は炎症に注目しているため、CAIAモデルを用いて関節炎を発症させ、in vitroで効果のあった抗体や薬剤が関節炎を抑制し得るかを評価する。 今後の課題として、ChIPシークエンスの結果がうまく出なかった場合、現在手元にあるHIF-1 αのChIPシークエンスの結果を用いてNFκB関連遺伝子をPick upし、機能解析をすすめていく。また使用しているマウスの系統が関節炎を惹起しにくいとされているため、実験動物の選定も必要と考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)順調に研究が進んでいるため、必要以上に経費をかけずに済んだ (使用計画)in vivoの解析など、次年度以降の経費のかさむ実験に使用する計画である
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