研究課題/領域番号 |
17K10998
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤井 朋子 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (40793089)
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研究分担者 |
山神 良太 東京大学, 医学部附属病院, 登録診療員 (00722191)
矢野 文子 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (80529040)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 関節軟骨最表層 / Wnt-βcatenin |
研究実績の概要 |
関節軟骨最表層の代表的マーカーであるPrg4タモキシフェン作動性ノックインマウスPrg4EGFPCreERt2とβcatenin-floxマウスを交配させ、また、Prg4EGFPCreERt2マウスとβcatenin Ex3(リン酸化部位を欠失する)floxマウスとを掛け合わせることで関節軟骨最表層特異的βcateninノックアウトマウス(Prg4EGFPCreERt2;βcatenin floxマウス)と関節軟骨最表層特異的βcatenin過剰発現マウス(Prg4EGFPCreERt2;βcatenin Ex3マウス)を作出した。骨格成長が終わってからタモキシフェンを投与し、βcateninをノックアウトまたは過剰発現させ、変形性関節症モデルにおいて、OAの初期発症のメカニズムの解明、βcateninの関節軟骨最表層における保護作用と変性について組織学的に詳細に検証した。H&E 染色やSafranin O 染色を行い、Osteoarthritis Research Society International (OARSI) のスコアリングで変性の程度を検討した結果、Prg4EGFPCreERt2;βcatenin floxマウス、Prg4EGFPCreERt2;βcatenin Ex3マウスともコントロール群に比べて変性が促進された。現在はそのメカニズムを詳しく検証するために、Prg4、βcateninだけでなく、軟骨変性関連分子の抗体を用い、組織学的解析を行っている。In vitroの解析では、野生型マウスより、初代培養関節軟骨最表層細胞と軟骨細胞を同時に単離する方法で採取し、TCF/LEF1とβcateninの恒常活性型または抑制型アデノウイルスを導入し、静水圧システムによるメカニカルストレスによる培養を行い、関連マーカーをリアルタイムRT-PCRで発現解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスを用いた実験に関しては、すでにマウスの交配がすすすんでいたため、すぐにモデルの作成と解析に取り組むことができた。ア デノウイルスなどのベクターに関してもこれまで研究室で既に確立している解析ツールであったので、順調に解析をすすめることがで きている。
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今後の研究の推進方策 |
Wnt-βcateninシグナルは多彩な作用を有するため、ChIP シーケンスとマイクロアレイを用いて網羅的に標的遺伝子の探索を行う。関節軟骨最表層細胞(SFZ)における Wnt-βcateninシグナルの標的遺伝子を探索するため、Tagで標識されたTCF/LEF1 発現ベクターを作成し、Primary SFZ細胞に遺伝子導入する。この細胞とコントロールのベクターを導入した細胞を用いて、DNA およびmRNA を回収し、ChIP シーケンスおよびマイクロアレイによる網羅的解析を行う。ChIP シーケンスにおいてin vivoでのTCF/LEF1の転写調節領域への結合があり、さらにマイクロアレイにおいて遺伝子発現変化がある遺伝子を抽出して、Wnt-βcateninシグナルのSFZ細胞における標的遺伝子を絞り込む。 今年度得られたマウス(関節軟骨最表層特異的βcateninノックアウトマウスと関節軟骨最表層特異的βcatenin過剰発現マウス)の変形性関節症の進行過程での遺伝子発現の継時的変化が組織学的解析でみられる遺伝子と網羅的解析により得られたTCF/LEF1の標的候補遺伝子を統合し、変形性関節症に関連した標的遺伝子の絞り込みを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度にマウスの解析が増えると予想されたため、そのための解析費用に充てる予定である。
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