研究課題/領域番号 |
17K10999
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田口 祐 東京大学, 医科学研究所, 助教 (20549472)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 骨代謝 / 破骨細胞 |
研究実績の概要 |
破骨細胞はその骨吸収活性により、造骨活性を持つ骨芽細胞と協調的に機能することで体内骨量の維持管理に関与するだけでなく、骨粗鬆症や癌骨転移に関与することが知られており、その分化・活性化の分子メカニズムの解明は骨疾患の新規治療法開発に役立つため待望されている。破骨細胞はその前駆細胞に発現する受容体RANKからの細胞内シグナル伝達により分化誘導することが知られており、本研究代表者は受容体RANKにおいて新機器脳領域HCRを見出していた。 HCRの機能と分子メカニズムを詳細に解明するため本研究代表者はHCRに会合する分子の同定を試み、数種の候補分子を得た。また、共同研究によりプロテインアレイを実施し、HCRに会合する候補分子を数種得ていた。そして、これらの候補分子から、破骨前駆細胞において刺激依存的に受容体RANKと会合する分子を見出し、更にはこの分子に関連する分子群がシグナル複合体を形成することを見出した。次年度以降、このシグナル複合体の機能を解析する。 また、本研究代表者が樹立した受容体RANKを刺激すると死ぬ細胞に、CRISPR/Cas9 Libraryを用いることで破骨細胞分化に必須な新規遺伝子をスクリーニング探索し、破骨細胞分化の分子メカニズムを網羅的に解明することを試みている。現在、スクリーニングの諸条件(死ぬ細胞の培養条件、RANKへの刺激条件、候補遺伝子の検出方法)の検討を終え、次年度はスクリーニング探索を実施し、候補遺伝子を選抜する予定である。 上記の実験が進行する一方で、研究申請時に計画していた受容体RANKに結合する分子を質量分析計で同定する研究と、HCRペプチドにより破骨細胞分化を人為的に制御する実験は進行が滞っており、次年度に推進する予定となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、破骨細胞分化における受容体RANKの分子メカニズムを詳細に明らかにすることと、破骨細胞分化に関与する新規遺伝子を同定すること、そして明らかになった知見を応用して新規に骨疾患治療方法を開発することである。基礎的研究で得た知見を応用して開発研究へ展開する計画のため、分子メカニズムの解明と新規遺伝子の同定は計画通りに進捗しているが、破骨細胞分化を人為的に制御する応用開発研究は滞っている。受容体RANKとHCRへ結合する分子を同定することと、破骨細胞分化へ関与する新規遺伝子を想定することにおいて、実験条件の検討に予想よりも多くの時間を費やしてしまったため、HCRペプチドを用いた破骨細胞分化制御実験を実施する時間の確保が難しく、計画から遅れてしまった。 従って、上記の通り、申請時の計画通りに進行したものと予定よりも遅延しているものが混在しているため、研究計画は「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は破骨細胞分化の分子メカニズムを詳細に解明し、骨疾患治療方法を新規開発することが目的である。本年度において当初の計画通りに受容体RANKとHCRに結合する分子の探索を行い、更には破骨細胞分化に関与する新規遺伝子の探索を推進している。そのため次年度も当初の計画に従い、それぞれの候補分子・遺伝子をCRISPR/Cas9法で破壊して 破骨細胞分化への関与を調べ、候補分子・遺伝子の既報の性質に基づき分子メカニズムを解析する予定である。 しかし前述の通り、分子メカニズムの解明実験に予想以上に時間がかかり、骨疾患治療方法の開発実験を実施する時間が不足し、計画から遅延している。そのため、実施内容は申請当初の計画に変更なく、HCRペプチドの阻害効果と阻害メカニズムの検証を実施する予定で、次年度にすみやかに実行する。 現在までに想定外のハプニングは起きていないため、申請時の計画順に実施する方策である。
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