研究課題/領域番号 |
17K11000
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
古賀 大介 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 非常勤講師 (60422482)
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研究分担者 |
辻 邦和 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座准教授 (20323694)
麻生 義則 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座准教授 (50345279)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | PAI-1 / 骨粗鬆症 / 骨形成 / 骨吸収 / 閉経 |
研究実績の概要 |
骨粗鬆症は、ロコモティブシンドロームの原因疾患として克服すべき疾患に挙げられるが加齢と骨代謝の分子メカニズムは十分に解明されていない。PAI-1欠損マウスは卵巣摘出による閉経後骨粗鬆症モデルでは骨量低下に抵抗性である。つまり閉経後骨粗鬆症にはPAI-1増加が重要であることが明らかとされた (Daci, E.ら2000)。連携研究者の宮田らは、PAI-1分子の新たな役割とその阻害薬の臨床応用を探索するため、低分子経口阻害薬を開発している。そのひとつであるTM5275は、対照薬とした臨床で抗血栓薬として最も使用されているclopidogrelと同等以上の確実な抗血栓作用を示し、なおかつ対照薬とは異なり出血時間を延長しないという長所を持ち、現在も低分子化合物の構造最適化が進められている。本研究ではマウスを用いた骨粗鬆症モデル、ラットを用いた大腿骨頭壊死モデルを作成し、PAI-1阻害剤を投与することにより、骨粗鬆症、大腿骨頭壊死の治療、予防効果を検証する。本年度は以下計画を立てた。【閉経後骨粗鬆症モデルに対するPAI-1阻害剤投与効果の検証】C57BL6Jマウスに卵巣摘出術、あるいはsham手術を施行する。術後にPAI-1阻害剤を生理食塩水に混濁させ、毎日ゾンデによって経口投与する。屠殺後に骨形態計測を行う。【マウス骨髄除去モデルに対するPAI-1阻害剤投与効果の検証】骨改変に対する影響を検証するために、骨髄除去後の骨髄骨梁再生を定量する骨髄除去モデルをマウスに適用し骨髄再生経過を解析する。閉経後骨粗鬆症モデルにPAI-1阻害剤を経口投与したところ、骨形成促進、骨吸収抑制の効果によって、骨量減少が抑制された。また、骨髄除去モデルでもPAI-1阻害剤投与により、溶媒投与群と比較して旺盛な海面骨再生が観察された。これらの成果はFEBS open bio誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨粗鬆症モデルである卵巣摘出モデル、および骨髄除去モデルにおいて、PAI-1阻害剤が骨代謝に促進的な効果を持つことが明らかとなった。結果は仮説どおりであり、また、国際誌にも掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の研究実施計画 。【マウス糖尿病モデルにおける骨量減少に対するPAI-1阻害剤投与効果の検証】C57BL6Jマウスにstreptozotocin (STZ)を投与することにより糖尿病性骨粗鬆症モデルを作成することができる。このモデルにSTZを投与し、非脱灰標本によって骨形態計測を行う。上記のマウスから骨標本を作製しAGEの発現を免疫組織学的に評価する。大腿骨に対して3点曲げ試験を行い骨強度を評価する。本年度はすでに採取したサンプルに対する評価、解 析を中心に行う。【マウスステロイド骨粗鬆症モデルに対するPAI-1阻害剤投与効果の検証】C57BL6Jマウスステロイド性骨粗鬆症モデルを作成する。PAI-1阻害剤を経口投与し、ステロイド投与開始後4週で屠殺、骨形態計測を行う。三点曲げ試験により力学的評価を行う。本年度はすでに採取したサンプルに対する評価、解析を中心に行う。 平成31年度の研究実施計画 【ラットステロイド誘発性骨壊死モデルの確立とPAI-1阻害剤投与効果の検証】参考文献(2009 Okazakiら Rheumatology)に基づき雄WisterラットにLPSとメチルプレドニゾロンを同時に投与して大腿骨頭壊死を誘導する。同時にPAI-1阻害剤を経口投与し、大腿骨頭壊死発生率に対する投与効果を組織学的に検証する。【マウス間葉系幹細胞増殖に対するPAI-1阻害剤投与効果の検証】宮田らはPAI-1阻害薬が骨髄ニッチから造血幹細胞を離脱 させ、造血細胞へと分化させることを発見した。本研究では間葉系幹細胞に対するPAI-1阻害剤の投与効果を検証する。各種骨粗鬆症モデルにおいて、末梢血、骨髄細胞を採取し、フローサイトメトリーにより間葉系幹細胞の分布を解析する。PAI-1の標的が骨芽細胞であることから、骨芽細胞の供給源である間葉系幹細胞の増殖が刺激されている可能性が考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
試験進行の関係上、必要とする試薬と請求額に若干の相違があり、端数が生じたが、次年度使用額は平成30年度に適性に使用する。
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