研究課題
【研究の背景と目的】骨粗鬆症は、ロコモティブシンドロームの原因疾患として克服すべき疾患に挙げられるが加齢と骨代謝の分子メカニズムは十分に解明されていない。PAI-1欠損マウスは卵巣摘出による閉経後骨粗鬆症モデルでは骨量低下に抵抗性である。つまり閉経後骨粗鬆症にはPAI-1増加が重要であることが明らかとされた。宮田らは、PAI-1分子の新たな役割とその阻害薬の臨床応用を探索するため、低分子経口阻害薬を開発しており、すでに第一相試験を完了している。本研究ではマウス骨粗鬆症モデルを作成し、PAI-1阻害剤を投与することにより、骨粗鬆症に対する予防効果を検証することである。【方法】生後8週の雌C57BL6/Jマウス30匹を、Sham手術+溶媒投与群(S+V)、卵巣摘出+溶媒投与群(OVX+V)、卵巣摘出+PAI-1阻害剤投与群(OVX+P)に分けた(n=10)。手術直後からPAI-1阻害剤浮遊液、あるいは溶媒をゾンデにて経口投与した。術後2週で採尿しCTX-1濃度をELISAで計測した。術後6週で屠殺し、大腿骨をmicroCT, 脛骨と腰椎を非脱灰組織解析にて解析した。骨髄細胞をFACSにより解析した。【結果】OVX+V群では有意に骨量が低下したが、OVX+P群では回復した。尿中CTX-1濃度は、OVX+V群、OVX+Pにて共に増加し、両者間に有意差はなかった。骨形態計測の結果、骨形成の指標はSham+V群と比較してOVX+V群にて増加したが、OVX+P群では更に増加した。FACS解析の結果、骨髄中のSca-1およびCD140a陽性の間葉系幹細胞がPAI-1阻害剤により増加していた。【結論】PAI-1阻害剤は、マウス卵巣摘出モデルにおいて骨形成を刺激し骨吸収を抑制することにより骨量骨量減少を予防した。PAI-1阻害剤は、骨粗鬆症の治療薬として有力な候補となりうる。
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Gene.
巻: 704 ページ: 134-141
10.1016/j.gene.2019.04.034.