研究実績の概要 |
【目的】Mono-Iodoacetate(MIA)を用いた関節症動物モデルに対してprocessed lipoaspirate cell (PLA cell)の関節内投与を行い、膝関節軟骨の組織学的変化および後根神経節における抗炎症・疼痛関連因子の免疫組織学的変化を検討した。 【方法】10週齢のSDラット(n=90)の膝関節にMIA 2mg/0.5mlと逆行性トレーサーを投与し、関節炎動物モデルを作成した。MIA注入後7日目(早期注入群)、14日目(進行期注入群)に同種脂肪細胞よりプラスチック接着法で分離培養したPLA cellを膝関節内に注射器を用いて直接投与した。MIA投与後7,14,21,28日でラットの灌流固定を行い、関節軟骨は肉眼的関節軟骨スコアを用いて評価し、合わせて組織学的評価も行った。疼痛評価は後根神経節におけるSubstance P、CGRPの免疫染色による陽性細胞割合で検討した。また局所炎症評価は膝関節滑膜のATF-3の発現を評価した。 【結果】関節軟骨スコアは、MIA投与後28日ではコントロール群が4.9、進行期投与群が4.3であったのに対し、早期投与群では1.5と良好であり、PLA cellによる軟骨保護効果を早期投与群においてのみ認めた。後根神経節におけるSubstance P、CGRPの陽性細胞割合は、PLA cellを投与した両群で有意に低下していた。また膝関節滑膜のATF-3発現も同様に低下していた。 【考察・結論】今回の結果からPLA cellは関節症動物モデルに対して、早期からの投与で関節軟骨保護効果を示したが、進行期に関節内投与を行っても軟骨保護効果は示さなかった。しかし抗炎症効果、除痛効果は早期および進行期で認められ、進行した変形性関節症に対してもPLA cellの関節内投与は抗炎症、疼痛抑制という点で有用であると考えられた。
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