研究実績の概要 |
平成29年度より3カ年の計画で「CD271陽性骨髄幹細胞の軟骨再生能および抗炎症作用の基礎的研究」を行った。令和元年度の実験結果は以下の通りである。 実験実験初期段階では骨髄幹細胞(BMSc)を使用していたが、CD271陽性細胞の含まれる割合が脂肪組織の方が50倍程度高く、途中より脂肪由来 MSCs (AD MSCs)を用いた。また現段階でCD271陽性細胞はヒトの抗体しか無く、術中に採取したヒト脂肪細胞から磁気ビーズを用いてCD271陽性AD-MSCsを抽出して実験に用いた。MSCsには抗原性が無いと言うことが一般的であるが、念のためヌードラットの軟骨欠損モデルを用いて検討を行い、CD271陽性細胞において高い軟骨再生能を認める結果であった (Kohli N, Al-Delfi IRT, Snow M, Sakamoto T, Miyazaki T, Nakajima H, Uchida K, Johnson WEB. Sci Rep. 2019;28;9(1))。それに先立ち、脂肪組織より抽出した平面培地に接着性のある細胞(大部分がAD-MSCsといえるが、一部雑多な細胞も含まれておりprocessed lipoaspirate cell: PLA cellとした)細胞を通常ラットの変形性関節症モデルに直接注入し、局所の抗抗炎症効果、変性軟骨の再生効果について検討を行った。その結果早期変形性関節症軟骨に対してはAD-MSCsの軟骨再生効果を認めたが、進行期及び末期変性軟骨に対しては軟骨再生効果は認められなかった。しかし、局所の抗炎症効果については早期、進行期、末期OAについてコントロール群と比較して優位に抗炎症効果及び疼痛発現物質の低下を認めた。それらより、MSCsの関節内直接注入は軟骨再生よりも疼痛抑制及び局所の抗炎症効果について効果を認めるということが分かった。
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