研究課題/領域番号 |
17K11004
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
栗山 新一 京都大学, 医学研究科, 助教 (90722942)
|
研究分担者 |
松田 秀一 京都大学, 医学研究科, 教授 (40294938)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 前十字靭帯/後十字靭帯温存型人工膝関節置換術 / 新しい筋骨格シミュレータ / 動的術前計画 |
研究実績の概要 |
1)前十字靭帯/後十字靭帯(ACL/PCL)温存型人工膝関節置換術(TKA)の「動的」解析:計測妥当性が既に検証された筋骨格シミュレータを用い、今後中年期以降の変形性膝関節症患者の就労と健康寿命の回復に重要な役割を果たすACL/PCL温存型TKAにおける術後機能と予後予測を行った。従来までの「静的」術前計画で設置されたACL/PCL温存型TKAは、膝屈曲に伴い外側側副靭帯、ACL及びPCLの過緊張を生じることが判明し、臨床使用で顕著化しつつある術後膝関節痛や拘縮残存の原因と考えられた。対して筋骨格シミュレータで「動的」な観点で正常膝に近い靭帯緊張を示す術前計画を多角的に行い、変形前の関節面形状に合わせインプラントを設置することで、関節靭帯の過緊張を軽減させることができると算出された。しかし、変形前関節面形状にインプラントを合わせるには、やや傾けて設置する必要性を生じ、脛骨内側に応力が集中することが判明、長期的にインプラントの緩みに繋がることが懸念された。従って、通常の設置方法で比較的簡便に関節靭帯の緊張を正常化する方法を模索し、大腿骨インプラントを通常選択されるサイズより小さいサイズを用いることで、膝屈曲時の靭帯過緊張が緩和されることがわかった。 2) 光学式マーカを用いたモーションキャプチャにおける術前・術後動態評価:既存の3次元動作解析装置を使用し、研究経費により購入した光学式マーカ、キャプチャ用スーツを用い、倫理委員会の承認を得てリクルルートしたTKA予定対象患者の歩行解析をはじめている。現在ACL/PCL温存型TKAの安全性の検討を進めている段階のため、バックアップの治療効果が安定したTKA機種で解析を行っており、良好な解析結果を得ることができている。 3)日本人の骨形態の3次元的解析(予備研究):研究経費で購入したコンピュータを用い、現在骨形態を計測中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の目標で掲げたACL/PCL温存型TKAの従来型コンピュータシミュレータを用いた「動的」術前計画は、当初の目標通りに結果を出すことができ、現在学会報告・英語論文作成に取り掛かっている。予備研究については、解析用コンピュータが導入され、現在鋭意解析中である。また、モーションキャプチャによる動的術前計画の妥当性の検証は、実際のTKA術前・術後患者で解析が行われており、動的術前計画との妥当性を検討中である。ただし、現在ACL/PCL温存型TKAの安全性と適切な手術法はまだ検討段階であり、バックアップで用いている安全性と術後長期成績に定評のあるTKAを用いて検証を継続している。
|
今後の研究の推進方策 |
本邦初の有限要素解析が可能な筋骨格コンピュータシミュレータ開発に向けて、現在ソフトウェア上で筋骨格のモデリングを行い、仮想空間で人工関節を設置し稼働可能な状態になりつつある。今後、前年度で解析した従来までの筋骨格シミュレータの解析結果、光学的マーカを用いた実際の患者における動態解析結果を照らし合わせ、新しい筋骨格シミュレータが正しく稼働しているか、また算出された解析結果に妥当性があるか検証をしていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、コンピュータ解析ソフトウェアが既存の保有ソフトウェアで現時点で解析可能であり、赤外線カメラ固定用三脚も既存の保有のもで代用可能であったからである。今後の使用計画として、現在作成している英語論文の1篇が近日完成予定であるため、その英文校正費用に使用する予定である。
|