研究実績の概要 |
昨年度はin vitroの実験系において、リウマチ滑膜細胞はミトコンドリア機能の低下があり、ミトコンドリアを増加させるAICARによってミトコンドリア生合成の亢進され、Caspase-9,3を刺激し、アポトーシスが誘導されていることがわかった。もともとミトコンドリア生合成能がリウマチの滑膜では低下していることから、そのミトコンドリアの低下が細胞増殖の亢進につながっている可能性が示唆された。 本年度はさらに、軟骨破壊のマーカーとしてMMP-3、骨破壊のマーカーとしてRANKLを測定した。AICAR投与により、どちらも有意に発現が低下し、ミトコンドリアのリウマチ滑膜における活性化は、関節破壊を抑制する可能性が示唆された。さらに、炎症性サイトカインであるIL-1,TNF-αの添加の有無により、AICARの細胞増殖能の変化を確認したところ、炎症性サイトカインが添加されたほうが有意に細胞増殖が抑制された。これにより、炎症環境下であるほど、ミトコンドリア機能の活性化が細胞増殖抑制によく働くことが示唆された。 さらにin vivoの実験系として関節リウマチのモデル動物であるCIAモデルマウスを用いて、ミトコンドリア機能の活性化が関節炎にどのように作用するか検討を行った。 前実験として、適切に関節炎が発祥されるかについて確認を行い、適切に関節炎を発症することを確認した。 その後、このマウスにおいて、コントロール群とAICARの腹腔内投与を行った群に分けて、関節炎の状況について検討を行った。関節の腫脹数と関節炎スコアはAICAR投与により有意に減少しており、ミトコンドリア機能の活性化が関節リウマチ治療に有用である可能性が示唆された。今後病理固有組織学検討、形態学的検討など、さらなる検討を行う予定である。
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