研究課題
変形性関節症(osteoarthritis: OA)は過度の力学的ストレスや加齢変化によって,関節破壊が生じる慢性炎症性疾患である。軟骨が消失することで疼痛や可動域制限等が生じ,患者の生活の質を著しく低下させるため,社会的にも重要な課題である。しかし,有力な治療法に乏しく,痛み止めなどの対症療法にとどまっている。関節軟骨は主に軟骨細胞と細胞外基質 (extracellular matrix: ECM) から構成されており,関節に炎症が生じると,軟骨細胞はECM分解酵素を産生して、軟骨基質が破壊される。本研究ではECM分解酵素に着目し,ECM分解酵素の合成を抑制することで軟骨基質の破壊をふせぐことのできる化合物を探し、理化学研究所が提供している400種類のパイロットライブラリーをスクリーニングし,ECM分解酵素であるADAMTS4やADAMTS9, MMP3,MMP13の発現抑制効果を検討した。まず、ヒト軟骨様細胞OUMS-27を用いて生細胞定量キットにより細胞毒性を評価した。化合物を加えていないコントロールを1とし,細胞の生存率が8割以下になった化合物は,細胞毒性が強いと判断した。強い細胞毒性の認められなかった345種類の化合物について,各細胞外マトリックス分解酵素の発現抑制効果を検討した。スクリーニングの結果,化合物Xが炎症性サイトカインであるIL-1βによって誘導された,MMP3・MMP13・ADAMTS4・ADAMTS9のmRNA発現を有意に抑制した。また化合物XはIL1-βによる刺激で惹起されたCOX2の発現増加も有意に抑制していた。COX2は炎症を促進する役割を持つ酵素であるため,COX2の抑制によって,過剰な状態となっている炎症反応をさらに抑えることができる可能性がある。この点においても,化合物XはOAの治療に有効である可能性があると考えた。
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